「県警が変わらないと息子の死が無に」遺族が悲痛な胸の内 兵庫県警機動隊員が自死 県が遺族と和解「パワハラを謝罪」“ボケ木戸”と付箋…繰り返された怒鳴りや叱責
2015年、兵庫県警機動隊の当時24歳の隊員が自殺した問題をめぐり、遺族が「先輩隊員のパワハラが原因だ」として損害賠償を求めていた裁判。大阪高裁で3月22日、県が遺族に慰謝料として約140万円を支払い、パワハラについて謝罪するという内容で和解が成立しました。 兵庫県警機動隊の隊員だった木戸大地さん(当時24)は、2015年10月、寮の自室で自殺を図り、一時は心拍が再開したものの、約10日後に病院で亡くなりました。
記載ミスの箇所に「ボケ木戸」と付箋
木戸さんをめぐっては、機動隊車両の運転日誌の記載などで、木戸さんがミスを繰り返したことをめぐり、先輩隊員が次のような対応をしていたことが認定されています。 ▽月に2~3回程度の頻度で怒鳴って叱責したこと ▽記載ミスをした箇所に「ボケ木戸」と書いた付箋を貼ったこと ▽「ミス一覧表」の作成・提出を命じたこと ▽木戸さんが2、3個のミスを記載して一覧表を提出すると、「お前のミスはもっとあるやろ」「こんな少なないやろ」と怒鳴るなどして突き返したこと
神戸地裁はパワハラは認定も 自殺との因果関係は認めず
木戸さんの両親は「一連の行為はパワーハラスメントにあたり、木戸さんがうつ病を発症し自殺した原因となった」として、兵庫県に対し約8000万円の損害賠償を求め、提訴。 1審の神戸地裁は2022年6月の判決で、「木戸さんが単純なミスを繰り返したことに対し、強く叱責する程度は相当な指導として許容されるべきだが、大声で怒鳴ることが常に必要だったとはいえない」「『ボケ木戸』と記した付箋を貼るなどしたことは、嫌がらせと評価されるような不適切なものだった」「ことさら木戸さんに厳しく対応していたとみるのが相当で、指導の域を超え、社会通念上相当性を欠き違法」として、先輩隊員の対応についてパワハラと断定しました。 一方で、「人格否定のような態様とまでは言えず、いじめや暴行を執拗に行ったと同視できるほどの、強度の精神的負荷を与えたとまでは評価できない」「木戸さんは自らの後輩への指導などで悩んでいた事情も見受けられる」などとして、先輩隊員のパワハラと、木戸さんのうつ病発症や自殺との間には、因果関係は認められないと判断。 パワハラによる「精神的苦痛に対する慰謝料」として、100万円の賠償のみを兵庫県に命じました。 この判決を不服として、木戸さんの両親と兵庫県の双方が控訴。控訴審は去年10月に結審し、その後、大阪高裁が和解を勧告。和解に向けた協議が続いていました。