「領海に侵入するな!」 尖閣調査船に迫りくる中国海警船 記者が見た〝緊迫の海〟
ヤギの食害で山肌は崩れ、赤土がむき出しに。海岸には国境を越えて漂着したゴミが堆積していた-。沖縄県石垣市が25~27日に実施した尖閣諸島(同市)の海洋調査で、動植物の宝庫とされる尖閣の希少な生態系が崩れつつある実態が明らかになった。陸上での詳細な調査が必要だが、海上保安庁の巡視船と中国海警局の船がにらみ合う「緊迫の海」と化し、対中関係の緊迫化を懸念する政府は上陸を認めていない。調査に同行した記者が目の当たりにしたのは、厳しい現実だった。 【写真】ドローンで撮影された尖閣諸島・魚釣島の様子を映し出したモニター。海岸付近で崩落が進んでいる ■たどたどしい日本語 日本列島の西端に近い尖閣の夜明けは遅い。27日午前5時45分、調査船のデッキに出ると、ちょうど東の空がうっすらと白みはじめていた。 はるか水平線に2つの船影が浮かんでいた。船員によると、緑色の明かりが見えるのが海上保安庁の巡視船。赤色の明かりは中国海警局の公船で、それぞれ電光掲示板の文字の色だという。 電光掲示板には領海からの退去を促すメッセージが日本語や中国語で表示される。第11管区海上保安本部(那覇)によると、この日は午前5時15分、2隻の海警船が尖閣周辺の領海に侵入した。前日の午後10時に石垣港を発った調査船を待ち構えるような動きだ。 「釣魚島およびその付属島々は、古来から中国の固有の領土である。その周辺12カイリは中国の領海である」 調査船の操舵(そうだ)室に、たどたどしい日本語の無線が響いた。尖閣諸島の中で最大の島である魚釣島を逆さまにした釣魚島は、尖閣諸島を表す中国側の名称。海警船からの交信だった。 これに対し、海保の巡視船は毅然(きぜん)と警告を発する。 「領海における貴船の航行は無害通航とは認められない。日本の領海に侵入するな!」 だが、海警船は「日本海上保安庁。貴船の主張は受け入れられない」と応じる気配はない。領海内を平然と航行している。海警船を囲むように10隻以上の巡視船が配備されており、フォーメーションを組んで、進路をふさいでいるのが分かった。 ■上陸調査へのハードル