「年商1億」「食べログ百名店の常連」の有名ラーメン店が突然の「閉店発表」拡大の中で店主が感じていた「虚しさ」と、再出発で掴んだ「幸せ」とは?
常連客がお祝いを持ってきてくれ、加えて各地からファンが集まった。駐車場が7台しかなかったこともあり、路上駐車が増え近所からは苦情の嵐だった。その後、一日50組限定にしたが、それでも16時までお客さんが途切れない状態だった。 「始めの1カ月は本当に大変でした。路上駐車の嵐で近所迷惑になり『よそ者が来るところじゃねえ』と罵られました。一方で『桐麺』ってこんなに有名なんだ、こんなに愛されているんだということに改めて気づいたんです」(桐谷さん)
新たな土地で「桐麺」を愛してもらうためには、自分が一目惚れしたこの町を愛していることを地域の人たちに知ってもらうところから始めようと、桐谷さんは地域の人たちと交流を始め、北条節句祭りなどの行事に積極的に参加するなどして、だんだん町に認めてもらえるようになった。 ラーメンは750円から1200円までいろいろな価格帯のメニューを準備した。 「近所の仲良しのおじいちゃんは『ラーメンなんかに1000円も出せるか』と言っていて、最初は750円のラーメンを食べていきます。でも、それで美味しいと感じると、次は1000円のラーメンを食べてくれるんです。
美味しいものを出していれば、『1000円の壁』なんてないんじゃないかと思う時もあります」(桐谷さん) 営業日は火・金・日の3日間のみ。営業時間は11時から14時までと昼のみだ。それでも平日で10万円、日曜日は15万円の売り上げを稼いでいる。 通常の店から考えると倍近い売上額。お店でラーメンを出しているほか、持ち帰りや通販なども好調に売れているからだ。 あまりにお客さんが集まることもあり、営業日を絞って仕込みの日と営業の日を完全に分けることにした。営業日は徹底的にお客さんに向き合うためだ。
「最近だとチェーン店などではロボットや機械が調理するところも増えてきています。それがかなりのクオリティーであることも知っています。 その中で、職人がロボットに負けないためには、お客さんに向き合って笑顔で接客することだと思います。人間にしかできないことをしっかりやるということです。厨房もオープンにして客席全体が見えるところで全員と向き合うのが僕の仕事だと思っています」(桐谷さん) ■ラーメン店の新たな生き残り方