2度目の優勝に王手をかけた大の里（右、撮影・尾崎修二）

大相撲秋場所13日目（20日、両国国技館）単独首位の関脇大の里（24）は取り直しの一番で大関琴桜（26）を寄り切り。12勝1敗とし、大関昇進の目安とされる直近3場所の合計が33勝に到達。昇進に大きく前進した。関脇霧島（28）、平幕高安（34）はともに黒星で3敗に後退。14日目に大の里が大関豊昇龍（25）に勝てば、2場所ぶり2度目の優勝が決まる。また、日本相撲協会は元大関で関脇貴景勝（28）の現役引退と年寄「湊川」襲名を理事会で承認し、発表した。 野望に手をかけた。大関昇進がいよいよ現実となる。関脇大の里が大関琴桜との取り直しの一番を制して12勝目。昇進の目安の数字に到達し、14日目に優勝の可能性も浮上する。 「勝ちはないと思っていた。最悪は負け。運がよくてもう一丁かと…」 最初の一番は大関に先に左上手を与え、上手投げをこらえた大の里が寄り返した。土俵際。琴桜が捨て身の突き落とし。足が出るのと、同時に大の里も土俵を飛び出した。行司軍配は琴桜へ。協議を待つ土俵下。大の里は「気持ちを切らさないようにした」。取り直しの一番は立ち合いから得意の右差し。電光石火の速攻で寄り切った。 大関昇進の目安は「直近3場所を三役で33勝以上」。三役3場所目の大の里は新小結で初優勝を飾った5月の夏場所で12勝、新関脇だった7月の名古屋場所では9勝6敗。この白星で目安の数字には到達したが、大の里は「まだ場所は終わっていない。あしたに向けてしっかり集中する」。 昇進問題を預かる審判部の高田川審判部長（元関脇安芸乃島）は「前へ出ている相撲だ。すべては千秋楽が終わってから」と明言を避けた。それでも、2度目の優勝も目前。年6場所制が定着した昭和33年以降、大関へ昇進した力士で直近3場所で2度優勝した力士は皆無。大の里の実力には強い説得力を持つ。 大の里の故郷、石川・津幡町は平安時代末期に源氏と平家の合戦「倶利伽羅峠（くりからとうげ）の戦い」があった。「延慶本平家物語」には平家方の敗因は「吉凶を占う男の意見を聞かず、運に見放された」とする旨の記述があり、地元でもよく知られている。「開運」「勝ち運」「出世運」。大の里がすべてを引き連れ、昇進を当確にした。（奥村展也）