北海道が提案、函館「新幹線アクセス線廃止」の愚 運転手不足なのに4000人超をバスで運べる?
■赤字を膨らませる「印象操作」 30年分の赤字額を提示するのは、鉄道の赤字額がいかに膨大であるのかという印象操作を行う道のいつもの手法である。また、道の試算については、鉄道の経費を過剰に見積もっているとの有識者からの指摘もある。今回も費用便益分析などの多面的な評価は行われず、協議の場に函館バスは呼ばれていない。なお、函館バスでは深刻な労使紛争を抱えているうえに、ドライバー不足の影響などからほかのバス会社と共同運行している函館―札幌間を結ぶ高速はこだて号の便数半減を行っている。
道がバス転換を提案した函館―長万部間のうち、函館―新函館北斗間は、函館市中心部と北海道新幹線の新函館北斗間のアクセス路線として機能しており、輸送密度は4000人を超える。さらに函館市が函館駅までの新幹線の乗り入れを視野に調査を進めている区間でもある。並行在来線のうち先に廃止の方針を決めた長万部―小樽間については沿線のバス会社が代替バスの引き受けが困難だとして協議が中断に追い込まれた。函館―新函館北斗間の輸送密度は、このうちの余市―小樽間の輸送密度2000人をはるかに超え、函館―長万部間全線のバス転換が現実的ではないことは明らかだ。
ある地域関係者は「職員の無駄な労力と人件費をかけて意味不明な提案を沿線自治体に対して行う道の仕事ぶりは完全な税金の無駄遣い。北海道民を愚弄している」と怒りをあらわにする。 2022年3月に後志ブロック会議で廃止の方針を決めた長万部―小樽間については、協議を主導した道がバス会社との相談を始めようとしたのは同区間の廃止の方針を決めてから1年以上が経過した2023年5月となってからのことだったことが、筆者が番組監修を担当したBSフジ・サンデードキュメンタリー「今こそ鉄路を活かせ! 地方創生への再出発」番組内での北海道交通政策局・小林達也並行在来線担当課長へのインタビューで明らかにされた。さらに小林課長は並行在来線の鉄道としての維持について「財政的な負担」であると述べ、廃線は決まったこととしてバス転換以外の選択肢は一切排除する姿勢だということも浮き彫りにした。