デイゴの樹勢回復へ 瀬戸内町3島で事業本格化 樹木医らが外観診断など
鹿児島県瀬戸内町の町指定天然記念物「デイゴ並木」(諸鈍)の第2期となる樹勢回復事業が本格的に始動した。受託業者の「木風」(東京都中央区、後藤瑞穂代表取締役社長)と共に森林病害虫の専門家らが7月30日から3日間の日程で加計呂麻島、請島、与路島に入り、外観診断や試料採取などを行った。 同事業は、病害虫による衰退や枯死が進む「デイゴ並木」の保護を目的とし、土壌改良や枯枝除去、薬剤散布などを施す取り組み。2019~21年度に続き、24年度から3カ年計画で進められ、今期から保護エリアを隣島にも拡大。3島で約70本の治療が行われる。 デイゴの病害虫被害が報告された08年当初、デイゴヒメコバチの寄生が衰退・枯死の原因とされていたが、研究調査で養菌性キクイムシに共生するフザリウム属菌が主因だと判明。 21年に加計呂麻島で採取したデイゴ試料のDNA分析からは、沖縄島や石垣島、宮古島で検出されたのと同じフザリウム属菌3種が確認されており、うち一種は加計呂麻島のアボカドと石垣島のマンゴーの木からも検出されている。 今期から治療対象となった請島、与路島では31日、フザリウム属菌のDNA分析のための試料採取をはじめ、養菌性キクイムシの種類や共生する菌種などを調べるためのトラップも設置。多樹種間の伝播(でんぱ)も想定した防除対策が進められた。 樹木医の後藤代表取締役社長(56)は「諸鈍のデイゴ並木の樹勢は回復傾向にあるが、デイゴヒメコバチの被害がぶり返している状況。花付きの改善には引き続き防除対策が必要」とし、10月頃にDNA解析結果を踏まえ、養菌性キクイムシとデイゴヒメコバチの防除を中心に、土壌改良資材の投入や施肥、感染した枝の切除などの治療作業に当たるという。