夫を見送ったグリーフ、ディズニーに通って…回復の仕方は人それぞれ 四十九日や三回忌の意味
夫を自宅で看取った経験から出家し、僧侶・看護師として、現在は緩和ケア病棟でスピリチュアルケアを担当している玉置妙憂(たまおき・みょうゆう)さん。夫を見送った後、玉置さんはディズニーランドに通って、ひととき「悲しい現実」を忘れていたといいます。(構成/withnews編集部・水野梓) 【画像】「手足がもがれるようなもの」 マンガ「夜廻り猫」が描く家族の死 <SNS医療のカタチTV2024:2024年8月3,4日、有志の医師たちでつくる「SNS医療のカタチ」が配信したオンライン番組。この記事はそのセッションを記事化した4回目です>
現実をぽっと忘れたディズニーランド
水野梓・withnews編集長:玉置さんは、夫さんを見送ったときのつらさとの向き合い方はどうしていたんですか。 玉置妙憂さん(僧侶・看護師):私はね、ほぼ毎日のようにディズニーランドに行ってたんです。 水野:ディズニーランド! 玉置さん:自分の存在そのものを支えるものというのは、人もそうだし、人じゃないものもありえます。 たとえばペットちゃんだったり、モノや音や言葉、宗教もそのひとつで、私たちを支えるよりどころになります。 うちの母なんかからは「もうやめなさい」って言われたんですけど、家にいたら、まだ骨もあるし、お位牌もあるしね。その現実から逃れられないんです。 でも、「夢の国」でミッキーなんか見てると、そのときだけはそれをぽっと忘れる時間ができたんですよ。 そして1年経ち2年経っていきますと、自然と足が遠のいて、通常の生活に戻っていくんですね。 自分が誰かを見送ったとき、何が支えになるか分かりません。でも何かしら支えるものがあるはずです。 その時に、まわりは「こんなことしちゃダメだ」とか否定しないでほしいですね。時には甘やかすということも必要かなと思います。 作家・浅生鴨さん(MC):私たちが受け入れがたい現実を受け入れるときに、仏教には「四十九日」ってあるじゃないですか。その時間っていうものが僕たちに与えてくれる大きな役割ってあると思いますか。 編集者・たらればさん:母親が10年ぐらい前に亡くなったんですけど、すごくやることがいっぱいあるんですよね。 ひとりで部屋で考えている暇もほとんどなくて、名簿を作ったり次やることを考えたり、ほうっておくと三日ぐらい経つじゃないですか。これはすごくよくて、魂の延命のようだったな、という気がしています。 浅生さん:玉置さんも、ディズニーで受け入れがたい現実をある程度、別のことをやることによって時間稼ぎした…ということですよね。 玉置さん:おそらくそうですね。グリーフっていうんですけど、大切な方を亡くした苦しみ、悲しみというのは、2年ぐらいかけて、回復していくよっていわれています。 たらればさん:おぉ、ちょうど三回忌だ… 玉置さん:そうですね、ただこれは一般論であって、みんながみんな2年経ったらっていうわけでないし、しかも2年たってぱっと元気になるんじゃなくて、みなさん薄皮を剥ぐようにね、薄皮を剥ぐように回復していくんですよ。 でもこうやって数字を出すと、「私は3年経っているんですけどまだ悲しい」ってすぐ引っ張られちゃうんだけど。2年の人もいれば、10年の人もいるんです。 その間は自分を甘やかして、とことん悲しみ切るっていうのも大事だと思いますね。 悲しみって落とし穴みたいなもんなんです。ふつうに生活しているつもりなのに、急に思い出してドボンと落ちて、どうしようもなく悲しくなったりするんです。 でもその時に、もう泣いてはダメだともがいてしまうと、底に足がつかないからいつまでも苦しいんですよ。1回きちっと悲しみきって底に沈むと、そしたら足がつくから、底を蹴って上がっておいで、ということです。