「様変わりした町になじめない…」人が戻らない東日本大震災の被災地、揺れる住民の心 かさ上げ工事で生まれ変わった岩手県陸前高田市 若手カメラマンが訪ねた
▽復興のつち音 「じょいわな、じょいわな!」。1月、虎が家を回り商売繁盛などを願う伝統行事「大石虎舞」が行われた。お囃子に合わせた威勢の良い声に、住民らが笑みをこぼす。担い手の男性は「音につられていろんな人が『うちにも来てくれ!』って。うれしい悲鳴だよ」と笑う。 虎舞を演じた一人、熊谷壮徠(くまがい・そら)さん(18)は、復興のつち音が響く中で育った。震災前より、個性ある店が増えたと感じる。この春、進学のため市外へ。専門学校で映像技術を学びながら、将来を考えるつもりだ。ここでまた暮らすか分からないが、「高田は海や星がきれいな町。いつか恋しくなる時が来るのかな」 ▽魅力ある町へ 新しい商店と空き地が混在する中心街の一角で、町づくり支援に取り組むNPO法人「陸前高田まちづくり協働センター」を訪ねた。理事長を務める三浦まり江(みうら・まりえ)さん(40)は西部の長部地区の自宅が流され、隣接する宮城県気仙沼市へ家族で避難。県をまたいで陸前高田に通い、活動を続ける。
震災直後、津波をかぶった自宅の片付けなどで陸前高田に戻った時、知人が被災者でありながらも、避難所で支援活動していたのを目にしたのがきっかけ。「自分は早々に市外に避難して…。何をのうのうと生きているんだろう」 活動は市内のNPO法人の支援が中心。町の発展には「地元住民が魅力を再認識することが欠かせない」と考え、昨年には住民向けに市の魅力を科目ごとにまとめた「たかたの教科書」を制作した。「復興やまちづくりはまだ道半ば。10年後にも花が咲いてくれればと願い、活動しています」 復興が進む一方、失われた町や暮らしの面影。戸惑いながらも前に進む人たちと、変化を見つめたい。