東京五輪2冠の大橋悠依が現役生活に幕「苦しいと言い表せない」 引退後は大学院進学「強化の一躍を担えたら」
◆国民スポーツ大会・競泳(14日・SAGAアクア) 東京五輪金メダリストの大橋悠依(イトマン東進)が現役最後のレースを終えた。国民スポーツ大会を最後に現役引退を表明していた大橋は、成年女子200メートル個人メドレーに出場。決勝ではともにパリ五輪に出場した松本信歩(早大)に続き2分12秒3で2位でフィニッシュ。レース後は松本と笑顔で握手を交わし、会場の声援に手を振って応えた。「勝って終わりたかったけど。これまでレースを楽しむことがなかなかできなくて、最後のレースは心の底から楽しもうと思ってそれができた。最後としてはいいレースだった」。ラストレースを振り返ると、プールで笑顔の奥に隠していた涙がこぼれた。 ■リオ五輪金メダリストが大胆イメチェン【写真】 東京五輪で200メートルと400メートルの個人メドレーの2種目で金メダルを獲得し、日本女子としては初の夏季五輪2冠を達成。「練習したことだけじゃなく、考えや性格、すべてが出るのが五輪だと思っている。多くの人が怖くて失敗するレースで勇気を出して金をつかみ取れたのはその後の3年間の支えになった」。今年のパリ五輪にも出場したが200メートル個人メドレー準決勝で敗退。「この3年間は苦しいと言い表せないほど気持ちがレースに向いていない時期もあったが、たくさんの人に支えてもらった」と東京五輪からパリまでの歩みを振り返る。 国民スポーツ大会を最後の舞台に選んだのも、支えてくれた地元の人たちへの感謝の思いがあった。「滋賀が大好きだし、東京に行ってからもたくさんの人に応援してもらっているのを身近に感じていた」と滋賀代表の一員として現役生活に幕を下ろした。 今後は大学院進学を志望する。「勉強したいし、やりたいこともある。長らくお世話になったイトマンに還元できるよう、イトマンから五輪選手やメダルを取る選手を出すための強化の一躍を担えたら」。どのような形を取るかは決めていないが、後進のために力を尽くすつもりだ。 世界のトップスイマーとなり日本の競泳の歴史に名を残した大橋は、競技生活への未練を問われると「全く。お腹いっぱいです」とすがすがしい笑顔を見せた。 (前田泰子)
西日本新聞社