丘を白く染める紙切れ チベット仏教徒の願いを天に届けてくれる「風の馬」
チベット高原にある四川省北部の丘を歩いた。まだ10月に関わらず、冷え切った風が肌を刺す。見上げると、丘の上が白く染まっていた。一瞬、雪かと思ったが、地面を覆っていたのは、ルンタと呼ばれる紙切れだった。 チベット仏教圏では、至るところにタルチョーとも呼ばれる五色の祈祷旗が見られる。経や動物が描かれたこの旗は、庭先や屋根にも掲げられ、チベットの人々にとって身近な存在だ。タルチョーの中でも、馬の描かれたものはルンタと呼ばれ、葉書ほどの紙に印刷されたものは願掛けのために空になげられる。ルンタとは「風の馬」。風の馬が空を駆け、願いを天に届けてくれる、というわけだ。 日本の神社の絵馬も、このルンタを起源にしているのかもしれない。 丘に積もったルンタは、いずれ風化し土となるのだろう。その時までに、どれだけの風の馬に託された願いが叶うのだろうか。 (2015年10月撮影)