「防災士」30万人の大台に 兵庫は1万人超え、全国8番目 人材生かす仕組みや組織化、女性の加入が課題
阪神・淡路大震災をきっかけに誕生した「防災士」の認証登録者が、昨年11月で累計30万人に達し、約20年で目標の大台に乗った。兵庫県内では1万人超え。地域の防災活動や災害時のリーダー役として期待されるが、人材を生かす仕組みづくりや組織化には課題も残り、継続的な養成も求められる。(田中真治) 【写真】阪神・淡路大震災30年語る アナウンサー 武田真一さん ■トップは愛媛県 防災士制度は、阪神・淡路で市民やボランティアによる自助・共助が注目されたことを受け、2003年度にスタートした。当初は伸び悩んだが、11年の東日本大震災で関心が高まり、15年度に10万人、20年度に20万人を達成した。 兵庫県は04年度に養成事業に参加。昨年11月の1万276人は、全国で8番目に多い。ただ、人口10万人当たりでは192人で、トップの愛媛県の10分の1。愛媛県は10月には累計数でも首位となった。 愛媛県によると「個人負担がないことが大きい」。県が講座を提供し、市町が教本費や受験料を負担。対象を自主防災組織から学校や企業にも広げてきた。 兵庫県の「ひょうご防災リーダー講座」も無料で、市町によって補助がある。だが、規模は大きく違う。24年度でいえば、兵庫は広域防災センター(三木市)と淡路県民局管内であり、定員は計190人。愛媛の「防災士養成講座」は県内各地で計20回開かれ、2千人を目標にしている。 兵庫県によると「定員を増やすのは難しい」。防災士の受験資格だけでなく、地域防災を担うリーダーの称号を与えるのが主眼で、第一線の専門家らを迎えた講座は期間も長い。募集枠はすぐに埋まるが、受け入れるための職員や予算が追いつかないのが実情だ。 ■「有事に活動できないと、養成する意味がない」 一方、県は自主防災組織に1人以上のリーダー配置を目指す。5750ほどの組織に対し、講座修了者は累計3850人。制度化から20年が過ぎ、世代交代を考えると「さらに増やしていく必要があると認識している」とする。 組織化も道半ばで、日本防災士会の兵庫県内会員は約350人。地域にできた防災士グループも、多くは有志にとどまる。県は防災リーダーについては把握しているが、防災士を管轄する部署はないという。 「資格を取ったが、何をしていいか分からない人が相当数いるように感じる。潜在層にアプローチできていないのはもったいない」と前兵庫県防災士会理事長の室崎友輔・神戸常盤大講師(地域防災)は話す。 昨年の能登半島地震でも「会員以外に呼びかけられれば、支援が広がったのでは」と振り返る。「有事に活動できないと、養成する意味がない。連携するにはハブ(拠点)が必要だ」 女性もまだ少なく、兵庫県では約25%。県防災士会は女性部会を設置し、溝田弘美理事長は「女性の視点は避難所運営などに重要」と活動に力を入れる。 【防災士】 認定NPO法人日本防災士機構(東京)が認証する民間資格。定められた研修(最短2日)を受け、資格試験に合格し、救急救命講習を修了する必要がある。養成研修は認証を受けた自治体や教育機関、民間法人が実施。公共的な制度として評価されている。警察・消防官らは特例制度により取得できる。