「ウクライナ侵略を考える~『大国』の視線を超えて」著者、加藤直樹氏に聞く(4)共有できる地平とは
ちょうど昨日、ウクライナ「社会運動」の若い活動家でドネツク出身のハンナ・ペレコーダさんがこうツイートしていました。 「説得力のあるオルタナティブを提案することなく、現在の構造を崩壊させることだけを目指すのであれば、それは結局のところ無責任としか言いようがない。大国のためではなく民衆のための未来、私たちの共通の未来についてのオルタナティブを見つけ、提示することが必要だ」 私は、この言葉に共感します。厳しい現実の中で模索する彼らと、こうした方向性を共有しながらつながっていきたいと思います。
日本のリベラル系知識人や平和運動は、当事者のウクライナ人でもなければ、力づくで「解決」を迫れる大国の権力者でもありません。だとすれば、普遍的な理念に由来する原則を掲げ続けるしかないと思います。原則とは「ロシアは撤退すべきである」ということです。 「即時停戦して、中立国で構成された国連平和維持軍を派遣し、公正な住民投票を行って国境線を新たに確定する」といった提案をしている人たちもいます。だから「撤退」という言葉は使わないのだそうです。この議論は、一見精緻なようで、よく考えれば極度に非現実的な話です。ロシアは侵略を継続する能力を持つ世界第二の軍事大国で、しかも国連常任理事国なのです。そもそも、ウクライナの領土について、ウクライナ人抜きで勝手にどうこう言うのは、当事者性を侵犯しています。
「平和的解決」を求めるのは当然だと思いますが、それでも、ウクライナから見て遠い外国の市民である私たちは、「ロシアは撤退すべきである」という原則を降ろすべきではありません。(了) ****************************************** ■6月29日に東京で『ウクライナ侵略を考える 「大国」の視線を超えて』(あけび書房)の著者、加藤直樹氏の出版記念講演会が開催される 「ウクライナ侵略を考える 「大国」の視線を超えて」 日 時 6月29日(土)14:00~16:00(開場13:30) 会 場 専修大学神田キャンパス10号館5階10051教室 地下鉄神保町駅A2出口3分/地下鉄九段下駅5出口1分/JR水道橋駅西口7分 オンライン(ZOOM)は事前申し込み(Peatix) https://ukrainewar.peatix.com 講 師 加藤直樹さん 資料代 1000円 共 催 あけび書房 お問い合わせ先 civilesocietyforum@gmail.com ****************************************** 【加藤直樹(かとう なおき)】 1967年東京都生まれ。出版社勤務を経てフリーランスに。著書に『TRICK「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(ころから)、 『九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響』(ころから)『謀叛の児 宮崎滔天の「世界革命」』(河出書房新社)など。