韓国与党、大統領の元側近が代表を辞任 弾劾で分裂、保守陣営の立て直しは困難な情勢
【ソウル=桜井紀雄】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」宣布を受け、国会で尹氏への弾劾訴追案が可決され、保守系与党「国民の力」内の混乱が一層深まる中、混乱収拾に奔走してきた党トップが辞任に追い込まれた。弾劾への賛否を巡って党内は分裂。憲法裁判所の弾劾審査の結果次第で大統領選も想定されるが、保守陣営の立て直しは当面、困難な情勢だ。 【写真】与党「国民の力」の代表辞任を明らかにした韓東勲氏 同党の韓東勲(ハン・ドンフン)代表が16日、記者会見で「これ以上、代表として正常な任務遂行は不可能になった」と辞任を明らかにした。韓氏は14日の弾劾訴追案可決後も続投の意向を示していたが、党最高委員5人全員が辞意を表明し、党指導部の運営が不可能になった。 「より良い道を探そうと努力したが、全て私の力不足のせいだ」と述べ、国民や支持者らに謝罪した。 尹氏が「国会は犯罪者集団の巣窟だ」と主張し、選挙システムの不備を指摘して戒厳宣布で兵力を国会や中央選挙管理委員会に投入したことについて「不正選挙論を主張する陰謀論者や極端主義者に同調するようでは保守の未来はない」と厳しく批判した。 一方で、革新系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が次期大統領の有力候補とされながら、数々の疑惑で複数の公判を抱えることを念頭に「戒厳が間違いだったとしても、決して共に民主党と李代表の暴走や犯罪容疑が正当化されるわけではない」と牽制(けんせい)した。 尹氏と同じ検事出身の韓氏は尹氏の側近として政界入り。尹政権で法相も務めた。党トップ就任後は、尹氏の妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏の疑惑への対処を巡って尹氏と距離を置き、大統領や与党の支持率が低迷する中、党の刷新を目指してきた。だが、今回、弾劾に対する立場を二転三転させるなどし、党内外から批判が出ていた。