「オーナーがパソコン分からない」から社員も使わない?/人気とんかつ店、会社ルールを刷新して成長~井筒まい泉後編
◆人事制度を刷新、「家業」になかったチャンスを作る
人事制度の刷新については時間をかけて取り組みました。 「今のまい泉にとって、一番いい人事制度とはどういうものかを1年かけて考えました。その間はひたすらヒアリングです。現状がどうなっているのか教えてくれと。3ヶ月間はただ、ヒアリングしていました」 岡本氏が1年かけて作った人事制度は、社員のやる気を引き出すアイデアが詰まっていました。 社員は全員、1年間の目標を作って提出、達成度を上司が評価し、給与や昇進に反映させることにしたのです。 例えば、ある販売店の店長は、制度刷新後、すぐに売り場の改革を直訴しました。 「弁当をもっと強化したら売上が上がる」とアピールし、提案は会社側に受け入れられます。 それに応えるため店長はさまざまな策を練り、結果も残しました。 「家業」だった時には、現場の人間にチャンスはほぼ皆無でした。 チャンスが与えられて結果を出せば、年に1回しっかり評価をしてもらえ、昇給につながるという仕組みは、社員に今までにないやりがいを生み出しました。
◆社員が求めているのは「お金」、2番目に「やりがい」
「社員が一番求めているものは、やはりまず生きていくためのお金。 二番目に働きがいなんですよ」と岡本氏は言います。お金をもらうために誰かにへつらうのではなく、自分の成果を会社が評価し、その報酬としてお金をいただくという流れが必要だと指摘します。 「従業員満足度なくして顧客満足度なし」というのが岡本氏の持論です。 「従業員が満足していれば、やれやれと言わなくとも勝手にやるんです。 店舗のスタッフだったら、お客さんがこうしたら喜ぶかな、ということをやるでしょうし、工場だったら、とにかく毎日少しでも美味しいものを出していこう、という発想になるでしょう」 社員のやる気を引き出す岡本氏の策は他にもあります。 例えば、職人たちのために開講した「松岡塾」。 当時の料理長の名を冠した塾は、「見て、盗め」の世界だった職人の技をすべて数値化しました。 パン粉をつける時の力加減、揚げる温度や時間などを正確に計り、職人に教えます。 その習熟度に応じて昇給もあり、社員の成長が給与に反映される仕組みになっています。