“持続可能”な競技とは。モーグルのメダリストが子どもたちに説く未来
長く続ける―。 その意味では、55人の子どもたちに加えて、一般枠が設けられていることも、大きな意味を持っていると感じさせた。 キングスベリーに指導を受けた40歳を超える参加者が教えてくれた。 「ミカエルに『良いね』って去年言われたことで、この1年思い出すたびに元気になりました!」「おじさんが楽しんでる姿が子どもたちに広げる事にも大事じゃないかなって思います」 聞けば、競技を始めて3、4年という。同じように参加したベテランの大人スキーヤー達の合言葉は「月曜日に仕事にいくこと」と笑う姿は、明るさに満ちていた。 モーグルに限らず、競技者以外の息の長い愛好者をいかに増やしていくのは大きな課題となっている。仕事柄、さまざまな競技のトップアスリートが直接指導を行うイベントに足を運ぶ機会も多いが、もっぱら対象は子供だけに限られており、大人が参加していることは非常に希だ。 もちろん、本イベントも主役は子供であるが、ベテランスキーヤーが指導を受ける姿は新鮮に映った。 モーグルを始めて3年ほどという會田泰丈さんが教えてくれた。 「世界のトップにこの年になって直接教えてもらえる機会は本当にないですから。大人になってもできるスポーツなんですよ」 こちらにも伝わってくる興奮が、また大きな価値を教えてくれた。
今回ゲストとして参加した中村拓斗は、前身となったイベントに小学校4年生で参加した際に初めてモーグルを滑った経緯を持つ。2024年1月に行われたユース・オリンピックで銅メダルを獲得。今回はゲストとして、教わる側から教える側へ回った。 その中でも吸収しようとしていることがあった。 「やっぱり怪我をしないっていうのは、滑る前の体の準備であったり、あと滑った後のケアも重要だと思っています。そういう部分が見られるかもですね」 そうして、競技は続いていくのだろう。 「自分にモーグルを授けてくれたキャンプですから」 かつての自分のように、この日初めてモーグルに触れた子もいる。 そして、その子がいつか、競技者を終えても、愛好者として長く、長く、滑り続けられるような未来へ。 子供、大人、そして選手たちの笑顔が多くを教えてくれた。
阿部健吾