フォルクスワーゲンが「リヴィアン」に8000億円投資! しかしVWの「盲点」となりうる“あのブランド”の正体
VWとの大型提携
「次のテスラ」として知られる米国の新興電気自動車(EV)メーカー3社は、先日経営破綻したフィスカー、ルーシッド、リヴィアンである。 【画像】EV失速?復活? これが販売台数の「最新データ」です(計10枚) フィスカーが連邦破産法第11条適用を申請してから約1週間後の2024年6月25日、フォルクスワーゲン(VW)はリヴィアンとの合弁会社設立と最大50億ドル(約8000億円)の出資を電撃発表した。 2024年第1四半期決算で約14億ドル(約2200億円)の赤字を計上したリヴィアンにとって、VWからの多額出資は渡りに舟となった。本稿では、資本提携の舞台裏と提携に賭ける両社の思惑を探る。
成長の軌跡
リヴィアンの前身は、リーマンショック真っただなかであった2009年に設立されたメインストリーム・モーターズである。 フロリダ州メルボルン出身のロバート・ジョセフ・スカンジ氏(現リヴィアン最高経営責任者〈CEO〉)が創業した。スカンジ氏は、マサチューセッツ工科大学の自動車研究室で機械工学を学び、修士号を取得した。 子どもの頃から隣人が所有するポルシェのエンジン組み立てなど、クルマのレストアを手伝っていた。また、自然を好むアウトドア派で環境問題にも高い関心を持ち、バラク・オバマ大統領から「Champion of Change」賞を受けた。 そんなクルマ好きとして知られるスカンジ氏が創業したリヴィアンの変遷をたどると、重要なマイルストーンが重なった年がいくつかあった。キーポイントとなった各年を軸にして、リヴィアンの変遷を振り返る。 ●2011年 社名が「リヴィアン・オートモーティブ」に変更され、EVの生産・販売と自動運転技術開発が事業の中心となった。スカンジ氏は、それまでとは異なる事業方向性に大きくかじを切り、後にリヴィアンが大きな成長を遂げる転機となった。 クルマ好きのスカンジ氏による着想からか、当初はスポーツカーの開発が進められていた。そのまま開発を続けるか、方向性を変えてさらなる資本調達を目指すかの岐路に立たされたスカンジ氏は、高級電動スポーツタイプ多目的車(SUV)にターゲットを絞って勝負に出た。その後の数年間は、「スケートボード・プラットホーム」と呼ばれるEVのプラットホーム開発に取り組んだ。新たな事業戦略を打ち出したことで2015年以降に、巨額の投資を得ることに成功した。 ●2017年 1月、三菱自動車がアウトランダースポーツなどを生産していたイリノイ工場を16億ドル(当時)で買収して手中に収めた。12月には、電動ピックアップトラックと電動SUVを発表した。 ●2019年 9月、アマゾンが配達用電動バンを10万台発注した。アマゾン、フォード、コックス・オートモーティブなどからの資金調達で、累計調達額が40億ドルに迫る勢いとなった。 ●2021年 2月、アマゾンへ最初の電動バンを納入し、ロサンゼルスで配送業務が開始された。9月には電動ピックアップトラック「R1T」がイリノイ州ノーマル工場から初出荷され、市販車第1号となった。11月、新規株式公開(IPO)で135億ドルの資金を調達した。フォードとのEV共同開発が撤回されたのもこの頃である。 そして、近年となる2024年4月、イリノイ州ノーマル工場で累計10万台となる電動SUV「R1S」を出荷したと発表した。同月、2026年発売予定の新型ミッドサイズクロスオーバー電動SUV「R2」シリーズやコンパクトクロスオーバー電動SUV「R3」および「R3X」を公開した。「R2」の予約注文は6万8000台に達した。