解散見送りで窮地の岸田首相〝一発逆転ホームラン〟時間稼ぎの策とは 会期大幅延長できなければ「総裁選」再選の目はほぼない
【日本の解き方】 岸田文雄首相は今国会での解散見送りとの報道について、「今まで変わらず申し上げているように、今は政治改革をはじめ先送りできない課題に専念している。それらにおいて結果を出すこと、それ以外のことは考えていない」と述べた。9月の自民党総裁選をにらんで、岸田首相にどのような戦略が残されているのか。 【画像】次期衆院選での「政党議席予測」(5月27日時点) 自民党は衆院補選や地方首長選で相次いで敗北しており、内閣支持率低下と相まって、岸田首相が今国会中に解散し、衆院選で勝利して9月の総裁選で再選を狙う―という見通しは立っていない。 政治資金規正法の改正もグダグダだ。自民党、公明党、日本維新の会で合意したはずが、4日の委員会採択が見送られ、自民党が3度目の修正案を提示した。「維新の言いなりだ」と自民党内からは不満たらたらだ。ようやく5日に委員会採択、6日の衆院本会議で通過となった。 しかし、こうした経緯で成立した政治改革を「岸田政権の政治的な成果だ」として、胸を張って解散総選挙に打って出られるかといえば難しいし、自民党内からも造反が出るだろう。 今の岸田政権にできることは〝一発逆転ホームラン〟のための時間稼ぎしかない。 岸田政権にとってベストなのは、今国会の会期を8月中旬~下旬まで2カ月程度、大幅に延長することだ。その大義名分は政治改革ではなく、憲法改正くらいしかない。これは冒頭に紹介した岸田首相の発言の中にある「今は政治改革をはじめ先送りできない課題」の「先送りできない課題」に相当する。 岸田首相は「自民党総裁任期中に憲法改正を実現したい」と言っていた。誰もができないだろうと思っているが、一部の保守系論者の中には、瀬戸際に追い込まれた岸田首相が、自分の延命のためとはいえ、底力を発揮し、憲法改正の条文提示や発議まで持っていくことをひそかに期待する向きもある。 大幅延長の間に、北朝鮮への電撃訪問ができれは、まさに「ひょうたんから駒」だ。 さらに、米バイデン政権が対中関税を引き上げる方針を打ち出し、欧州でも同様の動きがある。表面的には、バイデン政権の通商法301条による対中制裁関税は今の世界貿易機関(WTO)ルールに反するおそれがある。しかし、中国もWTOルール外で報復関税を実施するだろう。理念は別として、これが国際政治の現実だ。