能登半島地震の発生から半年。被災地での救助技術研修会に参加した消防士たちの志
消防士が到着するまでに、自分たちでもできることを
ここからは研修会に参加した消防士の皆さんにお話を伺います。 まずは被害の大きかった輪島市にある奥能登広域圏事務組合消防本部に所属する、政田(まさだ)さん、山下(やました)さん、弥田(よだ)さんが取材に応じてくれました。 ――被災地で救助活動を行う皆さんから見て、今回、どのような問題点が浮き彫りになりましたか? 政田さん(以下、敬称略):発災時、ちょうど休みの日だったので家族と一緒にいたんです。ものすごい揺れの後、家族の安全確認をしてから、すぐに消防署へ向かうことにしました。 でも、寸断されている道路が多くて所属する消防署へ行くことができず、ひとまず最寄りの消防署へ行くことにしました。結局、勤務する消防署へ行けたのは数日後のこと。道路の寸断によって移動が困難になるという問題にぶつかりましたね。 山下さん(以下、敬称略):2023年11月に、中部ブロックの緊急消防援助隊の訓練が能登町で開催されました。でも、その訓練で想定していた道路の状況よりも実際のそれはかなり酷いもので……。もちろん、訓練したことを生かせた部分もありますが、やはり災害時には想定外の被害に見舞われてしまうものだと身をもって体験しました。 ――今回の研修会に参加してみて、いかがでしたか? 政田:実は、このような実践的な研修会に参加したのは二度目になるんですが、一度目の時に発災時を想定した実地訓練の重要性を痛感したので再び参加しました。発災時にどんな機材が必要なのか、改めて消防署内でも共有したいと思いました。 弥田さん(以下、敬称略):普段の訓練ではなかなか学べないことが多く、こうして実際に被災した建物を使って研修させていただけるのは非常に勉強になります。 山下:もちろん能登半島地震のような大規模災害は起きないに越したことはないですが、こうして経験値を積むことで次の災害にしっかり備えたいと思います。 日本ではまだまだ木造家屋が多いので、その構造をしっかり学び直す必要性も感じました。 ――能登半島地震の被災地で活動する消防士の立場から、読者に伝えたいことはありますか? 政田:一般の人でもやはり基本的な救助の知識は身につけておいて損はないのかな、と思います。もちろん、災害時には自分たちのような公的機関を頼ってもらいたいですが、一方で、個人でもできることを学んでおく。そうしていざというときに周りの人と助け合える環境をつくっておいていただきたいですね。 弥田:私たちが管轄する地域では倒壊した建物が多かったのですが、実際に住民の方々が協力し合って、救助活動もされていました。それはとても大事なことだと思います。 私たち消防士が現場に到着するまでの間に、自分たちに何ができるのかを考えていただけると、より多くの命が救われるはずですから。