「新しい風を吹かせて」日本代表セッターが〝陽キャ〟リベロに託した東レアローズの未来、転換期のチームを鼓舞【Vリーグ女子】
バレーボールVリーグ女子1部(V1)の東レアローズが転換期を迎えている。昨季までの主力選手の多くが抜けた今季は2004~05年以来、19シーズンぶりの8位に沈み、リーグ戦後には日本代表セッターの関菜々巳(24)=日本協会=も海外挑戦のため退団した。顔ぶれが一新し、若手主体で臨んだVカップで「新しい風」を吹かせたのは、九州共立大から新加入したリベロの松岡芽生(22)だった。エネルギッシュな言動でリーダーシップを発揮した「陽キャ」が新生東レの未来を明るく照らす。 ■【写真】全身で喜びを表す東レアローズの松岡芽生 やり続けると決めたことなので、松岡に特別な感慨はないのだろう。「元気であったり、つなぎとかハードワークであったり…明るさを前面に出していこうと」。心の軸がぶれていないから、コートでの立ち居振る舞いも一貫している。オーバーリアクション気味に映る喜び方も本人にすれば、自然体なのだ。 「やっている私たちが…いい意味で『大げさ』に楽しまないと、見ている人には絶対に伝わらない。それは大学の頃からずっと頭にあります。結果が全て、過程なんて関係ないと思われるかもしれませんが、会場にはこうしてお金を払って足を運んでくださる方々がいる。だからこそ、余計に私たちが楽しまないと…」
若いスパイカー陣を後方から鼓舞
3月24日の久光スプリングス戦にセットカウント0―3で敗れた東レは、通算1勝4敗でVカップ敗退が決まった。リベロを含むスタメン7選手の平均年齢は久光の24歳に対し、東レは20・6歳(同日時点)。その中で22歳の松岡は、福岡大から加入したセッターの川副華笑(かわぞえ・かえで)とともに最年長だった。 試合は久光のサーブに崩されただけでなく、個々がミスを引きずり、切り替えられないまま、連続失点を招く悪循環に陥った。それでも松岡は、Vカップでレフト対角を組んだ20歳の深澤つぐみと19歳の谷島里咲(やじま・りさ)や、身長184センチの大型選手でライト側からの攻撃を担った19歳の古川愛梨(あいり)ら若いスパイカー陣を後方から鼓舞。得点した場面では全身で喜びをあらわにするなどハイパフォーマンスで活力を注入しながら、一体感をつくりだした。 「パス(サーブレシーブ)を考えすぎると攻撃が遅れたり、逆に攻撃の部分を考えすぎると、今度はパスが…。攻守のバランスを整えて精度を高めていくことが私の課題ですが、メイさん(松岡の愛称)がワンプレーごとに声をかけてくださるのでありがたいです」 古川も松岡の姿に勇気づけられた一人だ。鹿児島の加治木中時代に「全国都道府県対抗中学大会」で最優秀選手賞に選出され、下北沢成徳高(東京)でも名をはせるなど将来を嘱望される逸材。スタメンでコートに立ち続けた今回のVカップでは深澤、谷島とともに1次リーグの総得点ランキング(東レが所属したBグループ)でベスト10に入った。飛躍へのステップとなる大会となった。