記者が選ぶソフトバンクの6月「MIP」は…「腐ったら終わり」耐えて一軍昇格、交流戦3割5分1厘
プロ野球はレギュラーシーズン143試合のうち、およそ半分の日程を終えた。パ・リーグ首位を走るソフトバンクは、23日には今季初めて2位とのゲーム差を10に広げた。担当記者が6月の最も印象に残った選手(MIP=モスト・インプレッシブ・プレーヤー)に選んだのは、不屈の精神で一軍に昇格し、セ・パ交流戦で活躍した柳町達選手(27)だ。 【写真】柳町達「バットに気持ちを込めた」…今季初の先発起用に2点適時打で応える
チームには5月末、激震が走った。強力打線の主軸を担っていた柳田悠岐選手(35)が試合中に右太ももをけがして全治約4か月と診断され、長期離脱することになった。
首脳陣や選手の間で「みんなでカバーするしかない」が合言葉のようになった中、それを体現する仕事ぶりを見せたのが、交流戦の開始に合わせて今季初めて一軍に上がってきた柳町選手だった。
6月16日までの交流戦計18試合のうち、17試合に出場。期間中の打率は規定打席に達した両リーグの打者の中で3位となる3割5分1厘に上り、3回の猛打賞(1試合で3安打以上)を記録した。
9打点もマーク。得点圏に走者がいる場面で15打数7安打と勝負強さが光った。6番打者として先発出場する試合では、5番の近藤健介選手(30)が出塁した後に打席に臨む場面が度々あった中、「甘い球を1球で仕留める」と集中したことが結果につながったという。
村松有人打撃コーチ(51)は、コンパクトなスイングで打席と逆方向の左翼に鋭い打球を打ち返したことで確実性の高さにつながったと指摘。「力強さも出ていた」と語る。
外野のポジションは近藤選手ら球界を代表する選手がレギュラーを確保し、育成選手からはい上がってきた新戦力の台頭もあった。昨季116試合に出場した柳町選手でも、今季開幕は二軍でスタート。「もどかしい思いだったが、耐えるしかなかった」と振り返る。ただ、二軍で3割を超える打率を維持し、小久保裕紀監督(52)からはチャンスが来るまで「辛抱を」と告げられていた。自身も「腐ったら終わり」と、バットを振り続けた。
気持ちを切らさず出場機会を待った左打者が、表舞台で光を放った。(渡辺直樹)