森保J圧勝の口火を切った南野拓実はなぜ26年ぶりの記録を打ち立てることができたのか?
長友自身、モンゴル戦の前半33分に10年ぶりとなる代表通算4得点目となる3点目を決めた。そして、南野と長友のゴールに続いて、同40分のFW永井謙佑(FC東京)の4点目もアシストした伊東もまた、今シーズンのチャンピオンズリーグでザルツブルクと同じグループEに入っている。 「やっぱりインテンシティーが高い、厳しいリーグにいないと。僕はよく動物にたとえるんですけど、サバンナにいる動物とこのへんの近くの山にいる動物とでは、研ぎ澄まされ方といったものが違いますよね。常に狙われ続ける厳しい環境で育つ動物と、普通に寝ていても襲われない動物とはまったく違いますよね。僕ら人間も動物なので、同じなのかなと思っています」 獣が置かれた環境の違いを引き合いに出しながら、長友がチャンピオンズリーグの厳しさをユニークな視点で説明してくれた。そして、最高峰の戦いで得たものを先制点という形で森保ジャパンに還元した南野は、日本代表の歴史上で26年ぶりとなる記録も樹立している。 ワールドカップ・アジア予選において、初戦から2試合連続でゴールを決めた選手は、過去にはFW三浦知良(当時ヴェルディ川崎)しかいなかった。アメリカ大会出場をかけた1993年4月8日のタイ代表戦で決勝点となる先制点を決め、同11日のバングラデシュ代表戦では4ゴールを量産した。 「偉大な選手たちが戦ってきた舞台で自分が戦えている、ということに喜びを感じます。記録に対してはあれですけど、そういう舞台に、子どものころから夢見てきた舞台に立てているんだな、と」 自身が生まれる2年前の記録に並んだことに驚きながらも、南野は敵地ドゥシャンベに舞台を移して15日に行われるタジキスタン代表との次戦を見すえた。故障で選外となったFW大迫勇也(ヴェルダー・ブレーメン)を抜き、森保ジャパンではトップとなる8点目をあげたこともすべて通過点となる。 「記録は正直、気にしていません。チームをけん引していこうというよりは、今日も結果を残してカタールワールドカップへのサバイバルに勝ち残れること、モンゴルにしっかり勝ってポイントを稼ぐことしか考えていませんでした。ただ、勝利に貢献している意味で、ゴールは自信になりますよね」 余談になるが、カズは続くスリランカ代表戦でも2ゴールを決めている。天性の得点感覚をチャンピオンズリーグの舞台でさらに磨きあげた南野が、記録に対して無欲な、ゴールに対してはとことん貪欲なストライカーと化して、四半世紀以上も前に打ち立てられた偉業にスポットライトをあてた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)