農協は「抵抗勢力」なのか? 地方から見える構図は
「中央」と「地方」の力関係は
農協における中央と地方の関係は、実際どうなっているのでしょうか。「ピラミッドといっても、関係はむしろ逆」と指摘するのは、元農協の営農指導員で、愛知県の知多地方を中心に活動する農業コンサルタントの高木幹夫さんです。 全中は監査の対価などとして、年間約80億円の賦課金を地域農協(単協)から集め、資金源としています。 「逆に言うと、単協の資金がなければ全中は成り立たない。全中や県中は自らお金を生み出しているわけではないから。単協がきちんと経営できていれば、中央がどうなろうが構わないはず」
高木さんがかかわる愛知県大府市の「JAあぐりタウンげんきの郷(さと)」は、農産物の直売所にレストラン、体験農園、天然温泉までを備えた複合施設。15年前、周辺3農協が合併した「JAあいち知多」が、全額出資の株式会社をつくって運営を始めました。売り場には生産者の名前入りの農産品を平等に並べた上で、質の悪い野菜はすぐにバックヤードに下げるなどして農家の競争意識と品質を上げ、代わりに安易な安売りを控えています。ここだけでしか手に入らない伝統野菜の販売などにもこだわり、年間200万人以上が訪れる中部地方有数の人気スポットとなりました。 「いつまでも補助金をほしがり、守られようとしていてはだめ。地域に必要とされる農協に自主改革していかなくては。そのためには生産者と消費者の距離をもっと縮めること」と高木さんは提言します。
農協に頼らず「成長」目指す
農家が消費者に近づく試みは、むしろ「脱・農協」の現場で見られます。 名古屋市内では、2004年から有機農家たちによる「オーガニックファーマーズ朝市村」が定着しています。繁華街の栄で毎週土曜日に5、6軒の農家が集まって朝市を開いたのをきっかけに、名古屋駅前の「夕ぐれ市」など市内3か所に拡大。今は愛知や岐阜、三重から20以上の農家がとれたての野菜類を持ち寄り、都市部の消費者に直接販売しています。 参加農家の一つで、15年前に愛知県武豊町で農園を開いた太田博之さんは苦い思い出を振り返ります。「当時、農協に融資を申し込んだが有機農家など邪魔者扱い。きっぱり融資を断られた」。