橋下氏の今後、国政への影響……大阪ダブル選の結果は何を意味するか
野党再編や自民1強体制への影響は
維新は国政では「おおさか維新の会」という党名で活動している。国政政党が「おおさか」という地域名を掲げるのは一見奇妙に感じるかもしれないが、英国でスコットランド民族党という地域政党が第三党の地位にあることから見ても、地域に根ざした政党が国政で存在感を発揮することは不可能ではない。そこで重要となるのは、大阪の枠を越えた争点をどれだけ提起していくことができるか、広く国民の間に関心を呼び起こしていくことができるか、である。また、橋下氏個人の人気に頼らなくてもすむように、地域における組織基盤を整備していくことも必要であろう。言い換えれば、個人政党から地域組織政党への脱皮が求められている。 おおさか維新の会は都構想の実現に向け安倍政権とも連携していく方向である。今回のダブル選勝利により、その方向への動きは強まっていくであろう。一方、同会の分離元である維新の党は、松野頼久氏や江田憲司氏らを中心に民主党との合流・新党結成を志向している。他方の民主党では、細野豪志政調会長と前原誠司氏が解党・新党結成に積極的なのに対し、岡田克也代表は解党には否定的で、選挙協力などの連携にとどめたい方針である。
このように野党再編・野党間協力の行方は今のところ不透明であるが、野党がばらばらである限りは、自民党一強体制は盤石であろう 。かつての55年体制において自民党一党支配が長く続いた原因の一つは、野党陣営の分裂であった。今回も野党陣営が分裂したままだと、55年体制の再現になる可能性がある。 政党政治がうまく機能するためには、政党間で活発な競争がなされ、有権者に有効な選択肢が提示されていることが重要である。しかし、強い与党に対して野党陣営が分裂している状態は、ある種の「不完全競争」である。野党候補が乱立すると、有権者が持つ実質的な選択肢も限られてしまう。日本の政党政治の機能不全を避けられるか、各野党の動向にかかっているといえよう。
■内山融(うちやま・ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など