『降り積もれ孤独な死よ』山下美月が体現する絶望の果ての光 顔に傷のある男の正体を考察
灰川(小日向文世)の日記に決定的な事実が
この点について、笠松将演じる当該人物を健流の異父弟と考える説がある。冴木たちの訪問後に男は陽子宅に来宅していることから、健流にゆかりがあり、陽子にはもう一本、通常の赤いカーネーションも送られていたが、もし贈り主が健流でないなら異父弟と考えることは可能だ。しかし、もし男が健流の異母弟であるなら、陽子が気付かないのは不自然である。 男の正体に関するヒントとなりうる事実は、男が花音と旧知の仲であることだ。顔に傷がある男が複数存在しないことを前提として、第5話の襲撃はあくまで冴木と鈴木(佐藤大樹)を狙ったことになる。花音の行く先に出没し、自らを危険にさらす行為は、どちらかと言えば灰川邸事件と灰川に関する秘密を、外部の人間から守ろうとしているように見えるがどうだろうか。 ドラマオリジナルのキャラクターとして登場する森について、美来にコミットする姿勢は過去の経験からもたらされていた。自分のせいで友人が命を絶つというトラウマティックな記憶を抱えながら、「わかったふりで終わらせたくない」と語る森もまた自身のなかに問題を抱えている。それでも前を向く強さは本作に一条の光を投げかけている。 どうやら灰川の日記の最後のページに決定的な事実が記されているようだ。家族というものが血のつながりから系統的に生じるものとして、家族をめぐるミステリーを解き明かすには、そのルーツをたどることが謎にアクセスする上で有効といえる。答えは手の届くところにあると言えそうだ。
石河コウヘイ