頭のいい人が住宅ローンの「繰り上げ返済」も「変動→固定の借り換え」も絶対にしないワケ
● 変動か固定か、判断軸は? 一方、これから住宅を購入する人にとって、金利の上昇は由々しき事態だ。千日さんのもとには、夢のマイホームを手に入れようと計画をしていたが、数年前から住宅価格が高騰して、「今の自分の収入で多額の借り入れをしても本当に大丈夫なのか?」といった相談が寄せられているという。 「建築価格が高騰しているので、借入金額に対して不安を抱く人が増えています。その助け舟となるのが住宅金融支援機構と民間金融機関が提携している長期固定金利の『フラット35』です。子育て世代の人は、住宅の条件などで当初5年間から10年、15年と5年刻みで金利が最大1%下がる『子育てプラス』という制度が目玉です。金利は約1.85%です(6月時点)が、そこから1%下がるので固定金利としてはかなりの低金利です。 30年以上長期で組むのであれば、固定のほうが安心できます。必要以上に『日銀の利上げがいつなの』と恐れるのなら金利は高めでも固定金利を選ぶとよいでしょう。一方の変動金利はまだ競争が進んでいるので、0.3~0.5%など有利な条件で借りられます。支払総額を比較すると変動金利のほうが少なくなるでしょう。ただし35年の長期でローンを組むことになるので、金利が上がっても自分は返済を継続できるのか、随時判断していく必要があります」 総支払額を少なくしようと、住宅ローンを組む際、頭金を少しでも多く支払ったほうがいいと考える人もいるだろう。「住宅ローン控除」のメリットを最大限生かすためにも、頭金は1割程度にしておき、手持ちの資産として持っておいたほうがいいという。 「住宅ローン減税は、年末時点での住宅ローンの残高の0.7%が、入居時から最長13年間にわたって、所得税や住民税から控除される制度のことをいいます。頭金を支払いすぎてしまうと、ローン残高が少なくなって、住宅ローン減税の恩恵が少なくなります。住宅ローン減税が適用されている期間は、繰り上げ返済をしない方が節税となり得策です」 住宅は一生に一度、大きな買い物なので取り返しのつかない失敗をしないためにも、選択肢を間違えないように、金利や制度について知っておき、日々の経済の動向にも敏感になっておく必要がある。 千日太郎(せんにち・たろう) オフィス千日合同会社代表社員、公認会計士。「千日ブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える」、YouTube「千日太郎 公認会計士の住宅ローン専門チャンネル」が話題を呼ぶ。著書に『住宅ローンで「絶対に損をしたくない人」が読む本』『家を買うときに「お金で損をしたくない人」が読む本』(いずれも日本実業出版)、監修『マンガでわかる 不動産屋が絶対に教えてくれない「最高の家」の買い方』(扶桑社)がある。
村田くみ