「今がやる時だ」還暦過ぎて憧れの古本屋オープン メンコや古切手も販売、インスタで発信も
福島県南相馬市小高区の大浦秀航(ひでゆき)さん(66)は小高区の空き店舗を改装し「小高古本店」を開いた。学生時代から古本屋を営みたいという思いを胸の奥で抱き続けていた大浦さんは「夢の一つがかなった。本の楽しさを広め、古本屋のあるすてきな町にしたい」と小高への思いを口にする。 大浦さんは浪江町出身で、20年近く町内で学習塾を営んでいたが、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を機に塾を閉じ、県内各地で避難生活を送った。避難指示解除後、自宅のある小高に戻り、趣味の陶芸も楽しんでいたが、次第に満足感を得て、次は何をしようかと考えるようになった。 思い返すと学生時代から古本屋の雑然とした雰囲気、奥で主人がじっとしている風景が好きで、憧れも抱いていた。さらに古本をテーマにした角田光代さんと岡崎武志さんの「古本道場」などを読み、本のとりこになった。「自分はこんなに本が好きだったんだ」。60歳ほどになって、本を読む楽しさにも気付いた。
「今がやる時だ」。市の補助制度も活用し、不動産屋だった空き店舗を改装、本棚も一部は自分で作った。もともと所有していた200~300冊に加え、仙台市の古本屋や古本市を回り、古本店を開くのに一般的に必要とされる計2000冊を集め、11月に開店した。 今は買い取りも進み、文庫本や単行本、漫画など約3500冊に増えた。大浦さんは「本は心の中を温かくしてくれる。好きな作家と出会うことはささやかな幸せ」と語り、月替わりで作家を紹介するコーナーも用意する。 大浦さんによると、これまで小高区には古本屋がなかったという。「どの町にも一軒の新刊書店と古本屋、図書館があるといい。お客さんが少なくてもずっと続けていきたい」とこれからも小高で本の魅力を伝えていく。
1月4日から営業
住所は南相馬市小高区東町1の50。営業時間は水~土曜日の午後1時~同6時。メンコや古切手なども販売している。新年最初の営業となる1月4日には購入者に自作のそば猪口(ちょこ)をプレゼントする。問い合わせはインスタグラム(https://www.instagram.com/odakafuruhonten/)から。
福島民友新聞社