特産トマトと古来種八升豆の幸運な出会い ゼリーで現代の課題解決、高知県日高村
高知県日高村特産のトマトと相性がいいのは、古来種の「土佐八升豆」かもしれない―。村の地域商社が二つを組み合わせたゼリー食品を開発、将来的な商品化を見据えた研究を進めている。村の高齢化率は約43%。豆の栽培を通じて住民に活力を取り戻し、ゼリーの普及で現代人が抱えるストレス解消につなげたい。地元大学と連携して、一石二鳥の社会課題解決を目指す。(共同=野島奈古) 村で地域商社「nosson」を経営する小野加央里さん(42)が考案した。新型コロナウイルス禍によるうつ病患者の増加を受けた予防策や、村に住む高齢者の活躍機会を模索する中で「日常的に食べる物」を使った支援を考えた。 日高村のトマトは、ストレス緩和に効果のあるGABAを豊富に含む。共同研究する高知大次世代地域創造センターの富裕孝特任教授が、相乗効果を期待できる栄養素のある食べ物として提案したのが土佐八升豆だった。 小野さんによると、高知出身の植物学者牧野富太郎の著書に記述があり、江戸時代まで栽培されていたとみられる。形や大きさはソラマメに似ていて「1本の苗から8升収穫できる」との由来通り、収穫量の多さも魅力だった。
耕作放棄地でもよく育つ八升豆と、規格外で廃棄予定のトマトを使い、良さを最大限発揮できる形状としてゼリーを考案。スティック型で食べやすくし、モニターとなる企業・団体を募って有効性を検証する段階までこぎ着けた。 体力の衰えから米の栽培をやめた村民がいる中、八升豆の評判は「思ったより栽培が簡単やね」と上々だ。「集まってわいわいできるのがいい」と豆を介した交流も活性化しつつある。小野さんは「仕組みを回すことで社会に活力が生まれる」と手応えを感じている。