【社説】夏休み明け 子どもの変化見逃さずに
長い夏休みが明け、小中学校や高校で新学期が始まる。授業を再開した学校もある。 子どもたちの様子に変化はないか。食欲不振、服装や言葉遣いの乱れなどを保護者、教員、身近な大人たちが見逃さないように目を凝らし、心が発するSOSに耳を澄ませたい。 悩みを打ち明けられたときは、否定したり、叱ったりせず、寄り添うことが肝要だ。我慢や努力を強いて、1人で背負わせてはならない。 学校に通うのが苦痛なら、無理して通わなくていい。授業や校外活動の時間を柔軟に編成できる不登校特例校の設置や、フリースクールと学校との連携も進んでいる。 不登校に対する大人の不安より、優先すべきは子どもたちの安全だ。「頑張らなくていい。逃げてもいい」とはっきり伝えよう。 この夏は体調に影響する猛烈な暑さに見舞われた。福岡県太宰府市では35度以上の連続猛暑日の国内最長記録を更新し、各地で熱帯夜が続く。パリ五輪を夜更かしして観戦し、寝不足になった子も少なくないはずだ。 生活のリズムが崩れると、体や心の変調につながりやすい。久しぶりの学校で交友関係や勉強、受験といった悩みが大きくなっている児童、生徒もいるだろう。 痛ましいことだが、夏休み明けは自ら命を絶つ子どもが増える傾向がある。 警察庁や厚生労働省によると、2023年に自殺した小中高生は513人で、過去最多だった22年の514人とほぼ変わらなかった。今年上半期も昨年同期をやや上回る数で推移しており、深刻な事態が続いている。 国は昨年、子どもの自殺対策の緊急強化プランをまとめた。警察や消防、学校、教育委員会、自治体などが縦割りを超えて連携する。 自殺に至る経緯や背景、原因は人によってさまざまだ。原因を特定するのは容易でない。それでも分析結果を生かし、効果のある対策を打ち出さなくてはならない。 子どもには家族や教員に話しづらい悩みもある。胸が詰まる前に打ち明けやすい相談窓口を一層充実させることが不可欠だ。 この数年で交流サイト(SNS)を使った相談窓口が増えた。多様な窓口があり、相談しやすいことを学校などで繰り返し伝えてほしい。 教員はスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとの協力を強め、級友とのトラブルや家庭環境の問題を共有し、きめ細かな対応に努めてもらいたい。 働き方改革を考慮しつつ、悩みを持つ子どもたちに向き合う時間を優先して確保することが必要だ。 子どもたちは社会の宝である。普段からあいさつや声かけをして、地域で守り、育む機運を醸成したい。小さな変化に気付く目と耳を増やしていこう。
西日本新聞