家を建てるのに正方形の土地は必要ない!気鋭の建築家が「日本人の間違った常識」にモノ申す
---------- 人生でいちばん高価な買い物、マイホームをせっかく建てたのに、「こんなはずじゃなかった」と後悔する人があまりに多いのはなぜなのか? 気鋭の建築家・内山里江氏は言います。 「日本人が家づくりに失敗する最大の理由は、たとえば『家は南向きじゃなきゃダメ』とか『窓は大きいほうがいい』といった『間違った常識』によるものです。私は本書でそうした間違った常識をすべてひっくり返します」 内山氏の最新刊『家は南向きじゃなくていい』から、間違いだらけの家づくりをしないための方法を連載形式でお届けします。 ---------- 理想の土地を求めてさまよい続ける「青い鳥現象」の悲劇
「正方形の土地がいい」という幻想
理想の家を建てるのに100点満点の土地は必要ありません。70点もあれば十分です。 これは、「土地のせいで100%理想通りの家にならなくても妥協しなければならない」という意味ではありません。実は、プロの建築士は土地のネガティブな部分をポジティブに変えるアイデアを持っています。どんな土地でも対応できるスキルがあってこそ、プロなのです。 一例をあげると、過去に私は「エリアはよいのに地形に難がありすぎて買い手がつかない」という土地に建売住宅を設計したことがあります。うっそうとした雑木林のような場所で、土地は崖のように斜めになっており、近隣の子どもたちは「危ないから入ってはいけない」と言われているほど。しかし、すぐ近くに小学校や図書館、文化施設などがあり、エリアとしては好条件なのです。戸建てを3つ建てられるほどの広さもありました。 このように高低差のある土地は、崖の斜面を支えるコンクリートの壁のようなもの(「擁壁(ようへき)」といいます)をつくる工事をするのが一般的です。つまり、崖が崩れないように斜面を工事したうえで、フラットな土地をつくり、そこに家を建てるのです。今回の土地は道路から低いところで6m、高いところで9mもの高低差があるため、当然、擁壁工事は必要です。しかし、この工事には非常にお金がかかるのです。擁壁工事費用は住宅建築費に上乗せされるため、土地自体は安くても買い手がつきにくいというわけです。