”医師”と”製薬会社”がグルになって不正を…《癒着》が引き起こした恐るべき薬害『クロロキン事件』とは
米国留学で得たかけがえのない経験
長い判決を苦労して書きながら、英米法と英語を勉強し、留学試験に合格して、アメリカ、シアトル市のワシントン大学で、客員研究員として1年間研究に従事した。 私が研究、執筆を始めることになった大きなきっかけは、1982年から1年間のこのアメリカの大学への留学と、1986年から2年間の最高裁判所事務総局民事局における局付経験だった。 留学時代には、なぜアメリカ人は基本的に自由に生きているのに、自分を含む日本人はそうではないのかということをよく考えていた。これは、アメリカがよい国であるかどうかとはまた別の事柄である。アメリカという国には、さまざまな国家に対する武力、諜報活動、軍事援助等による介入という醜い側面があり、国内にも問題は多い。 しかし、少なくとも当時は、普通の市民の生活をみる限り、日本の場合よりもはるかに自由で伸び伸びしていたことも事実である。 また、アメリカの前記のような醜い側面についても、自覚的であり、よくないことであると思っている人々も存在する。そして、確かに、アメリカの正義派には、身体を張って人々の自由と権利を守ろうとする勇気をもつ「強い個人」が存在する。草の根民主主義の伝統と司法権の独立とが、アメリカの民主制を根元で支えているように感じられた。 私にとっては、アメリカでの1年間は、かつてない自由を謳歌できた貴重な期間であり、また、元々私は、精神形成についていえば、半ばは欧米、4分の1はアメリカで育ったようなものだったから、違和感や寂しさを感じることはほとんどなかった。 日本を震撼させた衝撃の名著『絶望の裁判所』から10年。元エリート判事にして法学の権威として知られる瀬木比呂志氏の新作、『現代日本人の法意識』が刊行されます。 「同性婚は認められるべきか?」「共同親権は適切か?」「冤罪を生み続ける『人質司法』はこのままでよいのか?」「死刑制度は許されるのか?」 これら難問を解き明かす共通の「鍵」は、日本人が意識していない自らの「法意識」にあります。法と社会、理論と実務を知り尽くした瀬木氏が日本人の深層心理に迫ります。
瀬木 比呂志(明治大学教授・元裁判官)