テクノロジーがもたらす音楽と社会の新しい可能性【SENSORS】
今、誰もが、テクノロジーの進化とその影響による社会の変化に向き合わなければならない。音楽業界ではどのような変革が起こっているのだろうか。それは、アーティストや音楽を愛する人々にとって好ましいものなのだろうか。 音声認識・メタバース・AIなど、最先端のテクノロジーが音楽業界や“音楽と私たちの関係性”にもたらした変革について、音楽ビジネスをけん引する3人が語り合った。
■テクノロジーは、音楽をもっと自由にする
音楽業界に革命を起こしたテクノロジーとして真っ先にあげられるのは、音声認識だ。例えばこれまでは楽曲の著作権を守るために、既存の曲と同じではないかなど、人間が1曲ずつ耳で確かめなければならなかった。しかし、技術の進歩によってオリジナル楽曲・二次創作・カバーなどをすぐに識別することができるようになった。 識別精度はすでに非常に高く、オンライン上での二次使用における権利処理が的確になされるようになった。そのため、音楽の幅がますます広がっていると、TuneCore Japan K.K. 代表取締役の野田威一郎さんは言う。
「音声認識は世の中をより自由に変えてくれました。将来もっと精密に判別できるようになれば、権利がさらに正当に処理され、もっと多くの動画クリエーターがアーティストの曲を使える時代になります」 より正しい権利処理によって、音楽もお金もさらにたくさん流通し、アーティスト同士の共創も一層進むと、野田さんは期待する。さらに野田さんが期待を寄せるのは、メタバースの浸透だ。仮想空間が日常化することで、1日=24時間という時間は変わらずとも、「現実世界」と「アバター世界」とでフィールドは2か所に増える。音楽が使われるケースや提供できる場面も増えるはずだと言う。 「アーティストにとっては、地球がもう1個できたようなものです。そこがメタバースであっても、音のない世界はないはずなので。使われるきっかけも増えて、いろんなことができるようになるんだろうなと、すごくわくわくしています」