大谷のエンゼルス新監督は野茂氏が「頭がいい」と評した人
過去にはユニークな構想も
それでも柔軟でユニークな考え方を披露することもあった。キャンプ中に正遊撃手が怪我をして、シーズン中の復帰が絶望的だと分かると、すでにタイガースのコーチになっていた名遊撃手、オマー・ビスケル氏の現役復帰をほのめかした。結局は、実現しなかったのだが、ビスケル氏は現役を引退したばかりで、あながちジョークとも思えないアイデアだった。控えだったアンドリュー・ロマインを時々、中継ぎ投手としても起用し、二刀流をさせていたこともある。 エンゼルスの大谷は、今月に右肘靱帯の再建手術を受けた。大谷は、来季は打者に専念するが、打者としての復帰はシーズンのどの時点になるのか。2020年に万全を期して二刀流として復帰するために、打者としての復帰にも慎重な姿勢を取るのか。メディカルスタッフと連係しながら、復帰へ向けていくつもの決断が求められる。 オースマス新監督の就任は、大谷の復帰への道のりと、復帰後の起用についてどのような影響を及ぼすのか。 オースマス氏は、2017年にタイガースの監督を退任することが決まった時に「またメジャーの監督をやりたい」という気持ちを明らかにしていた。その年のオフには他球団の面接を受けたが、すぐには監督になることはできず、エンゼルスのGM特別補佐という職を得た。 オースマス氏は、エンゼルスの監督になることを十二分に視野に入れた上で、GM特別補佐という仕事をしていたはずだ。1年前、エンゼルスが、大谷と契約をしてから、もし、自分が監督であれば、どのように大谷を起用していたかをシミュレーションしてきたことだろう。 フロント、ソーシア監督、大谷本人を含めた開幕から手探りの状態、二刀流としての起用、右肘の損傷、手術の決断、打者としてのパフォーマンスなどの全てを見てきている。 それらの経緯を考えると、当面は、今年のフロントとソーシア監督の対応を引き継ぎながら、フィードバックしていくことになるのではないだろうか。 名監督と言われる人でも最初から成功したケースばかりではない。オースマス新監督も2度目の監督業だけに、前回の反省を生かして、エンゼルスでリーダーシップを発揮してくれることと思う。日ハム時代も栗山英樹監督という理解力のある指導者に恵まれた大谷は、またいい指導者に巡りあった。 (文責・谷口輝世子/米国在住スポーツライター)