【漫画家に聞く】悪魔と天使が禁断の恋に? 二人の掛け合いにクスッとくる『悪魔が天使を好きになる話』
悪魔が性別不詳の天使に恋をした――。SNS漫画『悪魔が天使を好きになる話』は軽妙なやりとりのなかで、ほっこりとした読後感を与えてくれる作品だ。 【漫画】悪魔と天使が禁断の恋に? 『悪魔が天使を好きになる話』 作者は河口けいさん(@kwgc_k)。カッパやたぬきなどのキュートなキャラクターが登場する作品をXに多く投稿している彼女にとって、本作は異色作となる。その着想は何だったのか。 ――作品の反響などはいかがですか? 河口けい(以下、河口):普段Xでは趣味でカッパやたぬきなどの可愛い動物系漫画を描いていました。でも初めて取り組んだ人間の形をしたキャラクターの物語で、多くの方に読んでいただけたのは嬉しかったです。 ――今回はなぜ動物以外の物語を描こうと? 河口:商業誌だとラブコメを描いていましたが、ラブコメが苦手なんですよ(笑)。バトルや探偵漫画などを読んで育ってきたので、恋愛をどう描いたらいいかのアイデアが浮かばず……。 だから最初はBLを描こうと思ったんです。でも男性同士ものの歴史もよくわからずで、もう性別を断定しなくもいいかなと。それから恋愛よりも人が人を好きになる話になりました。 ――天使と悪魔を題材にした理由も知りたいです。 河口:人間が主役だとテンションが上がらないからです(笑)。だから自分を盛り上げるためのアイデアでした。人間でなければ結婚などの制約もないし描きやすい。それに100年くらい片想いでもいいし、寿命も長いから安心して見ていられるじゃないですか。 あとは色々な作品を描いてきて、物語に「愛」がある話の方がウケがいいんです。それを踏まえ、本作は「愛」をメインに描いてみました。「読んで喜んでもらいたい」という気持ちが根底にあるので、Xに合いそうなエピソードを早いテンポで並べてます。 ――絵柄についてはいかがでしょう。 河口:動物を描く時は「可愛く」が第一ですが、人間を描く時は性格が顔に出るように心がけています。色気のない話を描くことが多いので、ふとした表情が魅力的に見えるようにしたいなと。 まだまだ絵は練習しないといけません。「絵よりもストーリーだね」と言ってもらうことが多いので、商業でも原作を担当したりもすることもあります。 ――普段ストーリーはどのように考えるんですか? 河口:大まかな導入と中間と最後を決めて描き始めます。でも作りながらキャラクターが思いもよらない方向へ動き出すので、それに合わせて修正した結果、違うラストになる時もあったり。だから流れに身を任せて描いている気がします。 逆にプロットを作って描くと、つまらない作品しかできないんですよ。だから「先にどんな漫画か教えてください」と担当さんに聞かれても「描いてみないとわかりません」と答えるしかなくて……(笑)。その代わり自分でもワクワクしながら制作できるんですよ。 ――Xに載せている漫画は商業で描く時とは違う考え方? 河口:そろそろ商業デビューから15年ほどになるのですが、過去に描いたことがないジャンルに挑戦したいという気持ちがありましたね。本作のようなテイストがどう受け入れられるのかを見たくて。 今後は以前あまり描いたことのないホラー作品などにも挑戦してみたいです。とはいえ天使と悪魔のキャラクターを育て切れてないので、続きも描ければ。まだ形にはできていませんが、アイデアはまとめています。 ――商業で15年描いてきて、今の漫画家の活動って選択肢が増えたと思います? 河口:そうですね。ひと昔前は多くの人に読んでもらうためには雑誌に載せるしか選択肢がありませんでした。自分は思い付いたらすぐ描いて読んでもらいたいタイプなので、読者さんの反応がファンレターを待たなくてもわかるのは大きいです。 ただ気を付けないと趣味の作品ばかり描いてしまうので(笑)、そこで学んだことを商業にも反映させたいです。自分が楽しくないと読む人も楽しくないと思うので、そのバランスを担当さんと模索していければ。
小池直也