クマ目撃、去年はゼロ→6月だけで23件 青森・おいらせ町 住民に不安、町は対策急ぐ
青森県おいらせ町周辺で、今月に入りツキノワグマが相次いで目撃された。農作物の食害や人的被害は23日までに確認されていないが、クマの行方に住民は不安を募らせている。町内で昨年ゼロだった目撃情報は今年は6月だけで計23件。捕獲や駆除に至っておらず、再び町に戻ってくる可能性がある。町はわなの購入をはじめ、地元猟友会や三沢署との連携強化といった対策を進めている。 目撃場所は、4日に六ケ所村と三沢市の境界付近から情報が寄せられたのを皮切りに、日がたつにつれ市南部からおいらせ町へと約30キロ移っていった。町内では沿岸部の甲洋小学校の敷地や百石工業団地などで姿が見られた。 14日には八戸市でも目撃され、地元猟友会のメンバーが発砲した。おいらせ町内で連日、クマの足取りを追ってきたハンター歴56年の昆元実(もとみ)さん(74)=同町=はこの日夕、町と八戸市の境界付近を流れる奥入瀬川河川敷を約2キロにわたって調べた。クマが川を渡った形跡は見られず、昆さんはおいらせのクマと八戸のクマが同じ可能性を否定する。クマは16日朝に再びおいらせ側で目撃された。 食べ物やパートナーを探して広範囲を歩く個体もいるが、現在は木の実や山菜といった餌が比較的多い時期。実際町内で畑に入った形跡はあっても、食い荒らされた様子はなかった。なぜクマは山から遠い沿岸部に来たのか。 クマの生態に詳しい盛岡市動物公園の辻本恒徳園長は、全国的に個体数が増加し従来より分布域が広がっていると説明。好奇心旺盛な若い個体が、街中を歩き回っていた可能性があると指摘する。 16日以降、町に目撃情報は寄せられていない。甲洋小学校敷地内でクマを実際に見た金澤央広(なかひろ)教頭は「まだまだ不安な状況は続いている」。目撃場所に近い一川目に住む菅原義廣さん(73)は「畑作業で背後を気にするようになった」と話した。 今回、町の対策は防災無線やスマートフォンの情報アプリ「ほっとするメール」での注意呼びかけにとどまった。町はわなの購入手続きを進め、地元猟友会や三沢署との連絡体制の見直しもする。 辻本園長は「身を隠して移動するのはわれわれが思っている以上にうまい。(人里の)すぐ近くにクマがいると思った方がいい」と注意を呼びかけている。