米国でも市街地にクマ出没 対策は? 専門家が長期的管理や保護担う
日本だけではない。近年、米国でも市街地に出没するクマに悩まされている。 「民間のハンターが市街地に出たクマに対応するなんて、釣り人が人食いザメに立ち向かうようなものだ」 【写真】米国ではクマが自宅の庭にすみついた例がある。実際にクマがすみついてしまった自宅の庭の木。 日本の現状を伝えると、米国の関係者に驚かれた。米国の各州では、野生動物管理学を学んだ専門家が州の正規職員として雇用され、長期的に野生動物の管理や保護に取り組んでいる。 米労働省労働統計局によると、動物学や野生動物管理学の分野で州政府や連邦政府、調査機関などに雇用されている人は約1万7千人で、平均年収は7万5千ドル(約1100万円)という。 〈プーさんだけじゃない ディズニー・ワールドに野生クマ登場〉 昨年9月、米フロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールドの園内に野生のクマが現れたニュースは、世界中を駆け巡った。複数のアトラクションが閉鎖され、州政府の専門家らが出動する大捕物になった。 「私が現場で指揮をとりました。ヘリコプターを飛ばして中継するメディアもいて、その対応も大変でした」 そう語るのは、フロリダ州政府の組織、魚類・野生生物保護委員会(FWC)で野生動物管理の責任者を務めるマイク・オーランドさん(51)だ。 ディズニー・ワールドは、州内でもクマが高密度で生息する地域にある。フロリダ州はクマを駆除することは禁じられていて、「本物のクマのプーさん」として話題になったクマはオーランドさんらが捕獲し、国立公園の山林に放した。 ワニ、パンサー、コヨーテ……。フロリダ州は野生動物の宝庫だ。 「クロクマはかつてないほど増えて、現在約4千頭おり、人間とのあつれきも増えています。ワニなどと違って、クマは愛らしいイメージが強く、保護を望む声も多いので対策には気を使う」 オーランドさんが本部で指揮を執るFWCは、クマの生息状況に基づき州を七つの管理区に分けて、各区に野生動物管理の専門職員を配置している。本部にいるオーランドさんも含めてこういった専門職員が10人いるほかにも、出動1回につき決められた報酬を支払う契約を結んだ「クマ対応業者(Bear response contractors)」が22人いて、各地域で専門職員のサポートに当たっている。 「我々も課題が山積みだが、日本との決定的な違いは役割分担が明確なことだと思う」とオーランドさんは語る。(伊藤恵里奈)
朝日新聞社