NewJeansが『Bunnies Camp 2024』で証明したもの “初”尽くしだった東京ドーム公演
NewJeansが目指している、仲間たちと笑い合いながら過ごす「日常」
シングル、ミニアルバム収録曲を問わずこれまでほとんどの曲でミュージックビデオを制作し、効果的なプロモーションを仕掛けてきたNewJeans。つまり、そもそも既存の16曲だけで事実上のグレイテストヒッツ状態である上に、そうして次から次へと目の前で「事件」が起こるという、全編クライマックスとしか言いようがない多幸感に包まれていた今回の『Bunnies Camp 2024 Tokyo Dome』。しかし、自分が最も心を動かされたのは、彼女たちとそのスタッフが目指しているのが、すでにそのレールの先に見えているグローバルポップの頂点に立つことではなく、もっと身近な幸せ、これまでと同じように仲間たちと笑い合いながら過ごす「日常」であることが伝わってきたことだ。 歌のスキルにおいても、ダンスのスキルにおいても、そして「スキル」という言葉だけでは言い表せない表現力においても、NewJeansの5人がその世代で世界最高峰の才能を持った集団であることは疑いようがない。しかし、その上で彼女たちがステージで体現していたのは「完成形」ではなくどこか「未完成」なもの、「パーフェクト」ではなくどこか「不完全」なものであり、それはキャリアの短さや平均年齢の低さからくる5人のイノセントな輝きだけに拠るものではない。 自分のPCの最も目立つ場所には、2022年8月にリリースされた1stEP『New Jeans』のフィジカル盤に同梱されていた「NEWJEANS ARE NOT BLUE」と印されたステッカーが、今もずっと貼られたままだ。26日と27日、東京ドームに足を運んだ際にも被っていたNewJeansのキャップの後ろには、「Don’t Be Blue」と小さな文字が縫い込まれている。今年の春からHYEINの足の怪我、親会社とのトラブルと、ブルーにならずにはいられないことばかりが続いた5人は、それでも今回の『Bunnies Camp 2024 Tokyo Dome』でキャリア最大のイベントを大成功に導いてみせた。 2日目の終盤、それまで部分的には4人にステージを託さざるを得なかったものの、参加曲ではずっと堂々たるパフォーマンスを繰り広げていたグループ最年少のHYEINの涙が決壊すると、たまらずそれにつられて泣き出してしまったグループのムードメイカーのHANNIに対して、日本語で「あなたまで泣いちゃったら私はどうしよう?」と言ってその場でステージの床に寝転がってみせたグループ最年長のMINJI。デビュー時に「NEWJEANS ARE NOT BLUE」を標語としていた彼女たちは、最後まで互いを励まし合い、おどけ合い、笑わせ合っていた。やがてやってくるフルアルバム、ワールドツアー、グローバルでのさらなる成功。今回の『Bunnies Camp 2024 Tokyo Dome』を足がかりに、5人はさらなる目標に向かって走り出していくだろう。でも、今はこの奇跡のように幸福な時間が少しでも長く続くことだけを、強く願って止まない。
宇野維正