今こそ「全国一律の地方創生をやめる時」…「淘汰される地方」と「東京独立運動」への警鐘
今や世界中から富裕層がこぞって訪れる冬の高級リゾート地となった北海道ニセコ。どうやってニセコはインバウンドをものにしたのか。海外の富裕層を取り込む外国資本の戦略、日本の観光に足りていないものとは何なのか。ニセコの成功の背景を、リゾート地・富裕層ビジネス・不動産投資の知見をもつ筆者が、これらの謎をひも解く。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション *『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(高橋克英著)より抜粋してお届けする。 『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』連載第7回 『平日は「首都圏」勤務、週末は「リゾート地」へ…ニセコでも広がる「ワーケーション」・「デュアルライフ」の可能性』より続く
地方創生の限界
いくらテレワーク、ワーケーションといっても、すべての地方のインフラを整え、東京のような交通網や病院など社会インフラを整えるのは無理だ。 東京一極集中を是正し、地方への分散というのはきれいだが、実際には実現しない空論である。 当然ながら、地方での濃密な人間関係や教育文化での劣後、交通機関の不便さなど、デメリットも沢山ある。冬場や夏場の自然の大変さも旅行で行くのと住むのとでは大違いだ。 2011年3月の東日本大震災による原発事故において、首都圏でも放射能拡散情報が連日連夜報道され、多くの人が西日本に疎開したり、沖縄に滞在したりする動きがあった。 しかし、いつの間にか元の鞘に収まり、東京や首都圏では日常生活が戻っている。放射能はコロナウィルス同様に恐ろしく、人命に関わるにもかかわらずだ。
止まらない東京への一極集中
もう皆さんは気付いているはずだ。日本全国、すべての都道府県市町村が一律に自立し成長していくのは無理だと。それなのに地方創生だ! 地域の発展だ! 地方の時代! と正論に基づくむなしい施策やキャンペーンが横行している。 東京一極集中は簡単には止まらない。 コロナ禍下にもかかわらず、2020年5月、東京の人口は1400万人を初めて突破している。それが事実であり、かつ民意だといえないだろうか。 地方や田舎の良さが強調されるが、職業選択や居住や移動の自由がある日本では、各人が自発的に選択した結果が今の東京への人口集中であることを忘れてはならない。誰も強制的に東京に集められたわけではない。 好きだから、魅力があるから、チャンスがあるから、つまり、おカネが稼げるから、ヒトも企業も大学も、そしてカネも集まるのだ。