日本人学校10歳男児刺殺事件 中国「地方幹部」ヘイト発言の言語道断な“中身”と異色の経歴
「正義の声」は政府批判と紙一重
「公職に就く人間として軽率な発言はまずい」「個人的な意見としては問題ない」「とても正しい考えを持つ指導者」「言葉は人格と人間性を反映する」「非公開チャットの内容を報じる必要はあるのか?」「日本が大嫌いなんだけど、何が問題?」「極端なナショナリズムは容認できない」「中国人、特に四川人は日本人に対する深い憎悪を抱いている」――。 黄氏の記事に付属するコメント欄では、擁護派と批判派が言葉での乱闘を繰り広げている。一方、シンガポールの中国語メディア「聯合早報」は、反日感情を煽る投稿動画の削除が再び行われていると報じた。蘇州日本人学校バス襲撃事件後と同じ動きである。 中国でネット上から消された記事をアーカイブするウェブサイト「チャイナ・デジタルタイムス」は、深センの刺殺事件後に削除された3本の記事を紹介した。最初の1本は深セン市の微信公式アカウントの文章だ。深センはそもそも改革開放政策で作られた経済特区であり、育ての親はトウ小平氏である。よってこの文章は事件を強く非難し、トウ小平氏が日本企業に投資を要請し続けた事実や海外投資の重要性にも言及した。 2本目は「事件と『偏狭なナショナリズム』を結びつけたくない関係当局は事件詳細を明らかにしないが、曖昧にすると『扇動のスパイラル』が生まれる」などとして透明性を求めている。3本目は「いくら高層ビルが建ち経済力が高くても、通学中の子供たちや弱者を守れなければ、この街は失敗都市になってしまう」とする内容だった。 この3本だけでも、事件を巡る「正義の声」はともすれば政府批判と紙一重になる事実を想起させる。過激な反日感情を抑止するのか、それとも政府に矛先が向かうことを回避するのか。黄氏に対する当局の対応にもそうした判断が現れるかもしれない。
デイリー新潮編集部
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