NHK大河ですべて描き切れるのか…藤原道長とバチバチに対立した三条天皇が迎えたあまりにみじめな最期
■最後の願いも死後に転覆させられた 12月15日、ついに三条天皇は道長に、翌年正月に譲位する旨を申し出て、翌長和5年(1016)、太上天皇となった。むろん、即位したのは一条天皇の第二皇子で道長の外孫、敦成親王だった(後一条天皇)。 譲位に際して、自身の第一皇子である敦明親王を東宮にすることを条件とし、それを道長に認めさせたのが、三条天皇のせめてもの救いだっただろうか。 その後、寛仁元年(1017)4月に出家し、まもなく崩御した。享年42。 それから4カ月して、敦明親王は東宮位の返上を申し出ている。東宮として頼れる相手がいなくなったからだとされるが、道長からの無言の圧力が大きかった可能性も指摘される。『小右記』によれば、長和4年10月、道長は三条天皇に、「三条の皇子たちは東宮の器ではなく、故院(一条天皇)の第三皇子(敦良親王)こそ東宮にふさわしい」という旨を話していたという。 道長の思惑どおり、敦明親王に代わって東宮になったのは、道長の外孫(後一条天皇の弟)の敦良親王だった。冷戦はなにもかも、道長の勝利に終わったのである。 ---------- 香原 斗志(かはら・とし) 歴史評論家、音楽評論家 神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。日本中世史、近世史が中心だが守備範囲は広い。著書に 『カラー版 東京で見つける江戸』(平凡社新書)。ヨーロッパの音楽、美術、建築にも精通し、オペラをはじめとするクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』、『魅惑のオペラ歌手50 歌声のカタログ』(ともにアルテスパブリッシング)など。 ----------
歴史評論家、音楽評論家 香原 斗志