手加減なしの面白さ、オーストリア映画を渋谷で特集…ブラックな娯楽作も珠玉のドキュメンタリーも
見逃せない「ウィーン10区、ファヴォリーテン」
これら3本は既に日本での配給会社が決まっているが、それ以外の作品も見逃せない。中でも、ドキュメンタリー「ウィーン10区、ファヴォリーテン」は見逃してほしくない珠玉作だ。舞台は、伝統的な労働者の街であるファヴォリーテン地区の小学校で、生徒はほぼ全員が移民の子供。多様な民族的・文化的背景を持つ子供たちが一緒に学ぶ学級を、監督のルート・ベッカーマンは3年にわたって追いかけた。熱意ある教師と個性的な生徒たちのにぎやかな日常は見ていて単純に面白くいとおしいのだが、見ていると自然に考えたくなる。たとえば、公共教育の役割や課題を。たとえば、互いの違いを尊重して生きるために必要なものを。教育現場における人材・予算不足などひとごとではない問題にも触れられている。
「無用物」は、大ヒットした「いのちの食べかた」のニコラウス・ゲイハルターによるドキュメンタリー最新作。人間が日々、大量に生み出しているゴミの行方を、端正な映像でとらえた作品。ゲイハルターならではの凝視を誘う映像世界を体験した後は、自分のライフスタイルを見直したくなるはずだ。できるかどうかは別として。
このほか、注目の若手、ミレーナ・チェルノフスキー監督の「ベアトリックス」、アーティストとしても知られるエドガー・ホーネットシュレーガーによる「ミダースの蟻」が上映される。(編集委員 恩田泰子)
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