羽生の世界最高得点の裏に4回転の進化
元全日本4位で、フィギュアに関する著書もある現在インストラクターの今川知子さんは、「演技が冷静で落ち着いて見えます。回転で軸を締めきれるのは、体調の良さと、体のキレを維持できているからかもしれません。本来ならば、日程がつまってくる今の時期に疲労が蓄積されますが、その中でコンディションを維持できていることも、羽生選手の凄さでしょう。また4回転を高い確率で成功させていることで、その後のジャンプや表現にも大きな影響を与えています。5コンポーネンツ(演技構成点)で高い点数を獲得できているのは、質の高い4回転ジャンプの成功からのつながりでしょう」という見方をしている。 羽生自身は、4回転ジャンプの成功確率が上がったことについては、「4回転サルコーを跳び始めてから4シーズン目です。去年は怪我があったけれど、3年間の挑戦は絶対に消えません。練習にとらわれるのではなく、考えながら調整しています」と経験と試合での微調整が原因だと語る。 4回転ジャンプの進化が、すべてに波及効果を与え、出来映え点と演技構成点のアップにつながったのだ。 GPファイナルのキス&クライで羽生は号泣した。 「壁を越えれるか。怖かった」と、そのときの心境を語っている。そして目の前のライバルの演技に「負けるものか」という強烈な自己のエゴイズム。4回転の進化と共に、そういう内面での戦いを繰り返しながら安定し強靭になってきたメンタルも見逃せないだろう。 次なる舞台は、25日から始まる全日本。進化した4回転を武器に、敵は我にありーーの精神で、また新たな伝説の舞を羽生が見せてくれるかもしれない。