伊東の「ハトヤ」、円安で再び脚光-海外は高根の花、新婚旅行も近場
(ブルームバーグ): 東京駅から新幹線と電車で約1時間半、静岡県伊東市にある1946年創業の老舗「ハトヤホテル」は桜が舞う4月中旬の週末、多くの観光客でにぎわっていた。愛知県から友人と訪れた下谷知世さん(39)は昭和レトロ風のインテリアに目を奪われたと話す。
「部屋の色合いがパステルの黄色や水色で、歯ブラシもオレンジや緑色でかわいかった」。旅行好きで新型コロナウイルス禍以前は米国や欧州、アジアなどさまざまな国を訪れていた下谷さんだが、「最近は行けていない」という。
国内もホテル代が上昇しており今回も特に安いとは感じなかったが、費用に見合う満足は十分得られたという下谷さん。次に海外に行くのは「当分先じゃないですかね。今は高すぎますよね。もうちょっと気軽に行ければ」と話した。
コロナ禍を乗り越えた後、日本銀行によるマイナス金利解除後も止まらない円安が、日本人の旅行を様変わりさせている。訪日外客数は3月に308万1600人と単月として初めて300万人の大台を超えた反面、同月の出国日本人数は約122万人と2019年の6割程度の水準にとどまっている。
観光地で気前よくお金を落とす訪日外国人とは対照的に多くの日本人にとって今や海外旅行は高根の花。新婚旅行すら国内で済ませるケースが増えている。
リクルートブライダル総研による「ゼクシィ結婚トレンド調査2023」によると20年までは新婚旅行先に海外を選ぶ人が約8割だったが、コロナ禍後に逆転し昨年は7割近くが国内を選んだ。同年の日本人国内旅行消費額や日本人延べ宿泊者数は19年比で微減程度の水準で、国内旅行に関してはコロナ禍前の水準に回復したと言えそうだ。
スナック、カラオケ
物価も高止まりする中、「24年は旅行は限られた人ができるものになる可能性がある」とニッセイ基礎研究所の安田拓斗研究員はみている。「円安により以前に比べて海外旅行の予算がさらにかかる状態」になっているとし、国内で費用を抑えた旅行を選ぶ人は当面減ることはないだろうとの見通しを示した。