若葉竜也 1歳半から家業の大衆演劇で活躍も「役者になんか絶対ならない」今もとどまり続ける意外な理由
── どんなバイトをされていたのですか? 若葉さん:解体業、蕎麦屋の厨房、イタリアンのキッチン、あとショーパブのボーイとかもしていました。当時はほとんど役者の仕事がなかったんです。あっても年に1本とか。だから逆に言うと、「いつ辞めてもいいや」みたいな感じでした。大きく状況が一変したのは、『葛城事件』に出演してからですかね。 ──『葛城事件』には、どういうきっかけで出演されたのですか? 若葉さん:オーディションです。もともと好きな演出家でしたので、オーディションに受かった瞬間「とんでもないことになったな」って思いました。うれしさより、プレッシャーや不安のほうが勝っていましたね。
── 残酷な事件を起こす役でしたものね。どんなふうに役に入っていかれたのですか? 若葉さん:通り魔の犯人という役柄で、共感したり理解したりすることはできないまでも、彼に一番近い位置で同情するというところにたどり着いた、という感じです。 ── どこに共感、同情したのでしょうか。 若葉さん:多分、人間ってみんな根底に「寂しい」という感情があると思っていて。寂しさは、人間の基本的な感情のひとつだと思うんです。その「寂しい」という感情のあり方が、共通しているところかなと思います。
やっぱりみんなちょっとずつ寂しいというか、だから人と人とがつながっているわけで。まったく寂しくなかったらひとりでいればいい、というか。「寂しい」とか「悲しい」といったことは人間の根本的感情だと捉えながら、大事に演じたいと思っています。
■「好き」だけで乗りきれるほど甘い仕事じゃない ── 子どもの頃は役者の仕事が嫌いだったんですよね。それなのに、今でも演技の世界に身を置いている一番の理由は何でしょう?
若葉さん:辞めたら、ご飯が食べられなくなっちゃうじゃないですか。今、僕は34歳で、いまさら役者を辞めてどこかに就職できるほど世の中は甘くないと思っているので。結局、今の自分にとっては、役者の仕事が一番食い扶持を稼げる可能性が高いだろうと。 でも、この仕事も情熱で乗りきれるほど甘い仕事ではないとも思います。だから、「好き」という感情だけではない大きな責任感のもとで役者を続けているつもりです。