虎、3番鳥谷の原点回帰で連敗脱出
1試合遅かったが、それは言うまい。保守型の指揮官、和田監督がついに打順に大きなメスを入れた。 「1番で鳥谷の状態はよかったが、つながりで点が取れなかったので思い切って動いた」(和田監督)。 6連敗で迎えた12日の広島戦。和田監督は、鳥谷を昨季までの定位置の3番に戻し、1番に西岡、2番大和の布陣で連敗脱出に臨んだ。先制点にはならなかったが、初回に西岡が二塁打。2回にも、その新リードオフマンが二死二塁からサードベースにボールが直撃するラッキーなタイムリーを放つなど、新打順がはまった。 違った場所にはめた歯車がひとつ動きだすと全体がカラカラと動き出すものだ。その西岡の手痛い送球ミスで3-2と逆転され、1点を追う展開となった8回。広島は、中崎をマウンドへ送り逃げ切り体勢に。先頭の代打・新井良が四球を選んで3番の鳥谷に打席が回ってきた。 センターバックスクリーンの旗は、レフトからライトへ強く吹く風にパタパタとはためいていた。 ボール、ボールとなってマウンドにカープの野手陣が集まった直後の3球目だった。 「むこうも(これ以上)ランナーを出せない場面。(ストライクを投げてくるだろうから)思い切って引っ張っていってやろう」 鳥谷の心境回顧。 インサイド低めの148キロの暴れたストレート。今季初打点となる逆転2ランがライトスタンドへ糸を引いた。鳥谷はガッツポーズもせず、表情を変えずにダイヤモンドを回った。 「甲子園で勝てていなかったので、そういう意味で勝ててよかったです。チーム貢献には打点というものが大切だと思っています。なんとか勝利を決める打点というものを考えていました」 キャプテンらしいコメント。ミスを帳消しにしてもらった西岡は、試合後、「鳥さんの一打で救われた」と偽らざる心境を打ち明けた。この試合で、鳥谷の通算試合出場数が1559試合となり、阪神では、あの初代ミスタータイガース、藤村富美男氏の1558試合を抜いて阪神歴代8位の記録となった。堂々たる阪神の顔だ。昨年オフに海外FAを宣言。チームがひっくり返る寸前だったが残留を決めた。ファンをやきもきさせたことへの返答は、お立ち台に呼ばれ続けることしかなかった。 スタンドには、「猛虎の要、鳥谷」とのサインボードが掲げられていた。