【モデル前田エマの韓国】今熱いのはアートシーン。ソウルのおすすめアートスポット&美術館3選
韓国のドラマ、映画、そしてBTSの音楽を聴き始めたことがきっかけで韓国・ソウルに半年間語学留学をしたモデルの前田エマさん。ソウルに暮らすことで気づいたこと、韓国と日本のカルチャーの違い、韓国の歴史…。前田さんの視点でみた、盛り上がっている韓国のアートシーンについて教えてもらいました。 【写真】モデル前田エマおすすめの韓国最旬スポット
■韓国を知ることは、日本をもっと知ることだった ――著書『アニョハセヨ韓国』のまえがきで、2020年ごろに韓国という国に惹かれ始めたと書かれています。モデル、アーティスト、最近では小説も出版され、キャリアを築いている中で留学をするのは大きな決断のように感じますが、決め手はなんだったのでしょうか。 前田さん:2020年、コロナ禍で話題になっていた『愛の不時着』や『梨泰院クラス』を観たり、BTSの音楽を聴くようになりました。彼らの楽曲の中に「光州事件※」について歌っているもの(「Ma City」)があり、「光州事件」って一体なんだろう?と疑問を持ち、「光州事件」をテーマにした映画を観て、小説を読んで…。数珠つなぎのように韓国の文化と歴史への関心を抱くようになりました。 ※光州市を中心に起きた軍事政権に対する民主化運動。子どもを含め多くの市民の死傷者を出して武力鎮圧された。 「光州事件」を調べていくなかで韓国という国が長い間、軍事政権だったということや、人々が声をあげて歴史を変えてきた過去を持っていることを知り、さらに好奇心がふくらんでいき、韓国に行きたいという気持ちになりました。 政治への関心も高いので選挙の投票率が高く(2024年の韓国総選挙は暫定投票率67%)、デモやストライキも活発に起こしている韓国の人たちが持つ価値観を知りたい、彼らの暮らしを身近で感じたいと思い、留学を決心しました。たとえ理解できないとしても、知ろうとすることに挑戦してみたかったんです。 ――観光で訪れるだけでは気づけない、知り得ないことに触れたいと思ったのですね。 前田さん:そうだと思います。暮らさないとわからないことってたくさんあると思うので。留学して改めて日本との関わりが深い国なのだと実感しましたし、日本にいるだけでは知り得なかった、日本のことを知るチャンスがあるとも感じました。 過去の歴史を踏まえると、韓国の人たちはもっと反日感情を持っている方が多いのかなと勝手に思い込んでいたのですが、ソウルでは日本のカルチャーが大人気で、私が抱いていたイメージとのギャップにも驚きました。 J-POPもよくお店で流れていますし、日本風の居酒屋も多く、ハイボールや日本の生ビールも大人気。レコードバーでは、シティポップが流れていましたし、レコードショップにも80~90年代の日本のレコードがたくさん並んでいました。若者たちは自ら進んで日本のカルチャーを摂取していて、うれしくなりました。 ■熱くなり続ける韓国のアートシーン ――韓国では若い人を中心にアートシーンが盛り上がっているそうですね。前田さんもその雰囲気は感じましたか。 前田さん:ソウルではギャラリーが大学生のデートスポットにもなっていて、若者が本当によく美術館に足を運んでいると感じました。 韓国は、モネやレンブラントのような、世界的名画のようなものは日本に比べると少ないんです。そういう背景もあってか所蔵している作品は現代アートが中心。なので日本人よりも、現代アートに対する敷居が低いのかもしれません。 滞在中に、韓国発のアートフェア「Kiaf SEOUL」と、「FRIEZ」という国際的なアートフェアが同じ時期にソウルで開かれたんです。二つのアートフェアを同時に鑑賞できるチケットは日本円で9000円以上しました。決して安い金額ではないのに、若者を中心に盛り上がっていたのには、アートへの関心度の高さを感じました。ここ数年の間に世界的なギャラリーがソウルにたくさんオープンしているそうですし、確実に韓国のアートシーンは熱くなっていると思います。 ここまでアートが盛り上がっているのは、韓国の著名人がカルチャーリーダーとして大きな影響力を与えているからかもしれません。アートコレクターとしても知られるBTSのRMさんが来た展示はすごく話題になるそうで、来客数も大きく変わるそうです。彼をはじめとした著名人の影響力というのも韓国らしいかもしれませんね。 しかし都市と地方の文化的格差があるように感じましたし、実際にそういう面もあると聞きました。若いギャラリストに話を聞いた際も「コンテンツがソウルだけに集中してしまっているというのは課題だ」と言っていました。でも、光州ビエンナーレや釜山ビエンナーレといった、歴史ある芸術祭が地方には存在します。今後、韓国のアートシーンがソウルだけのものになるのか、国全体に広がって行くのか、注目していきたいなと思います。