神村学園が試合終了間際の逆転劇で7連覇!“鹿児島サッカーの将来のため”にも日本一を本気で、全力で取りに行く
[5.25 インターハイ鹿児島県予選決勝 鹿児島城西高 1-2神村学園高 OSAKO YUYA stadium] 【写真】「何度見もした」「可愛すぎる」「惚れてしまう」仲田歩夢がピッチ外でもファン魅了 神村学園が劇的勝利で7連覇! 令和6年度全国高校総体(インターハイ)鹿児島県予選決勝が25日に南さつま市のOSAKO YUYA stadiumで開催され、ともにプレミアリーグ勢の鹿児島城西高と神村学園高が対戦。神村学園がDF中野陽斗(2年)とU-17日本高校選抜候補MF大成健人(3年)のゴールによって2-1で逆転勝ちし、7大会連続10回目のインターハイ出場を決めた。 神村学園は、0-1の後半残り2分から逆転。ゲーム主将の日本高校選抜MF名和田我空(3年)は、「神村全体のほんとに力が出たなっていうのは思いました。大会前から『簡単にはいかないぞ』って話もしていましたし、本当に自分たちだけの結果じゃないので、先輩たちの歴史を後輩に繋ぐことができてホッとしています」。執念の連覇。また、選手、スタッフが共有する「自分たちが鹿児島サッカーを盛り上げる」の強い思いを表現し、全国切符を勝ち取った。 今年、鹿児島城西がプレミアリーグ初昇格を果たしたことで初の「プレミア決戦」となったファイナル。“高校年代最高峰のリーグ戦”での厳しい戦いによって、例年よりも早く守備を構築してきた鹿児島城西が、神村学園の攻撃の特長を消して見せる。ゴールに近づく前に相手のドリブル、パスワークを止めると、U-17日本高校選抜FW大石脩斗(2年)へのロングボールやDF背後への配球。敵陣でスローインを獲得し、左SB柳真生(3年)のロングスローで相手にプレッシャーをかけた。 神村学園はU-17日本高校選抜の司令塔、MF福島和毅(2年)が準決勝(24日)に負った足首の怪我によって欠場。U-17日本高校選抜DF鈴木悠仁(3年)をボランチに置いて決勝をスタートした。 その鈴木やMF松下永遠(3年)が、ボールを引き出して前進することにチャレンジ。松下の展開から右WB大成が攻め込み、獲得したスローインから大成がロングスローを投げ込む。だが、ビルドアップを幾度か相手に“食われて”しまったことで、勇気を持ってボールを繋ぐことができない。 前線へのロングボールが相手MF常眞亜斗(2年)に跳ね返されていたほか、名和田へのパスも鹿児島城西の右SB福留大和(3年)に狙われて一気に押し返されてしまう。ストレスを感じながらの攻撃に。有村圭一郎監督が「もうずっと相手の土俵でサッカーしてるような状態だった」と振り返るような展開が続いた。 だが、神村学園はU-17日本高校選抜DF新垣陽盛(3年)、DF黒木涼我(3年)、DF中野陽斗(2年)の3バック中心に、相手のロングボール、セットプレーに対応して得点を許さない。前半は互いにシュートゼロ。鹿児島城西は後半開始から右SH吉田健人(2年)、同10分に180cmFW浮邉泰士(2年)を投入してスコアを動かしに行く。 浮邉とのコンビから吉田がクロスへ持ち込み、CKのこぼれを大石が右足シュート。そして、15分には左CKから福留が決定的なヘッドを放った。鹿児島城西はサイドからクロスが上がり、セットプレーの本数も増加。一方の神村学園は後半21分に鈴木を前線へ上げ、シャドーのMF佐々木悠太(2年)をボランチへ落とした。 競り合いで強度の高い動きを見せていた佐々木が、ボールを運ぶ力も発揮。だが、鹿児島城西が先にゴールをこじ開けた。29分、吉田の柔らかい右クロスから浮邉がヘディングシュート。これを神村学園GK江田優大(2年)が横っ飛びで止める。だが、こぼれ球を交代出場のMF野村颯馬(2年)が左足でゴールへ蹴り込んだ。 交代出場の3選手が係わる形で待望のゴールが生まれた。35分ハーフの試合終了まで残り6分。鹿児島城西はゴール裏スタンドの控え選手たちがピッチサイドまでなだれ込む。近年、選手権を含めて全国大会予選決勝で幾度も敗れてきた神村学園からの大きな1点に感情を爆発させた。 ここまでは相手のスーパーエースMF名和田にボールをほとんど触れさせず、被シュートはFKから新垣に打たれたヘッド1本のみ。クロスもほとんど上げさせずにほぼ完璧な守備を続けていた。だが、新田祐輔監督が「完全に浮足立ちましたね。ベンチも、スタンドも優勝したぞって。それで、緩くなって。あれからクロスが4本、5本……何本上がったか」と指摘したように、挑戦者・鹿児島城西に隙が生まれてしまう。 神村学園は失点直後に高さ、運動量のある鈴木を攻撃的なレフティー左WB井村知也(3年)へチェンジ。左WBの大成をシャドーの位置へ上げる。有村監督は「(失点した後の)次のゲームの運び方を冷静に分析しながらできたかなっていうのは思います。(神村学園には)そこにちゃんと応える選手たちがいるので。鈴木代えてから流れが来たので、何回かチャンスは来るだろうなっていうのは思っていました」。すると、33分、神村学園はセットプレーの流れから連続攻撃。名和田の左からの折り返しなど、ゴール前にボールを入れる。そして、大成の右クロスが相手のミスを誘発。ゴールエリアへこぼれたボールを中野が右足ダイレクトで蹴り込み、1-1とした。 残り2分。今度は神村学園の控え選手たちがゴール裏スタンドを飛び出して喜びを爆発させる。勢いづいたチームはさらに右クロスから井村が決定的なヘッド。そして、35+1分、佐々木が右サイド後方からゴール方向へクロスを上げる。これを大成が頭で合わせると、ボールはゴール左隅へ。再び赤いユニフォームの歓喜の咆哮が響き渡った。 同点弾の中野は「先輩方のためにゴールを決めたこと、決めて勝つことができて良かった」。また、失点に絡んでいた大成は「何が何でも決めるって思いで行ってたんで、決められて良かったです」と微笑んだ。このまま試合終了。劇的な優勝を飾った神村学園だが、勝負の夏はこれからだ。 神村学園はこれまで、個の育成を重視。有村監督(鹿児島実高選手として95年度選手権優勝を経験)はその姿勢を継続した上で、夏の日本一のタイトルを「全力で狙いに行く」と明言する。何よりも「鹿児島のサッカーを盛り上げる」ため。自分たちがインターハイや選手権で勝ち上がることによって、地元の人たちがサッカーに関心を持ってくれる。鹿児島のサッカーが盛んなことを知ってもらう機会になる。この日、2日前の帰国から間もなく応援に駆けつけたDF吉永夢希(現ヘンク)やFW福田師王(現ボルシアMG)のように高卒での欧州プロサッカー選手やJリーガー、年代別日本代表、日本高校選抜を立て続けに輩出しているが、自分たちが結果も残してより鹿児島に影響を与える意気込みだ。 鹿児島では長年、サッカー専用スタジアム新設の議論が続いているが、神村学園の活躍がその後押しにもなるはず。有村監督は「そういうのが僕らの役目かなと思うし、未来の子供たちがサッカーする環境整えてあげたり、そういう立場でもあると思う」。準々決勝(23日)の試合前、指揮官から鹿児島サッカーの将来への思いを伝えられた選手たちは、「そんな思いがあるんだなってことを自分たちも分かったし、チーム全員も『シビレた』っていうことを一人ひとり言っていました。ほんとに期待に応えられるようにしたい」(名和田)。 名和田や鈴木、新垣、大成ら神村学園の現3年生は、神村学園中3年時の21年全国中学校大会で初優勝。名和田は「もちろん歴史を作りたいです。中学校3年生の時の夏は勝ってるので、そのモチベーションを持って、『この夏を本気で取りに行くんだぞ』っていう意味で頑張りたいと思います」。この日、神村学園と鹿児島城西は全校応援。1200人の観衆の中で激闘が行われた。その戦いを制した神村学園は、鹿児島県内の高校生の代表としても全国挑戦。同校にとって初の日本一を本気で、全力で、取りに行く。