“北陸新幹線”延伸で話題の「敦賀駅」に不満が殺到…「中京・関西住民はかえって不便に」、「乗り換え“わずか8分”問題」も
乗り換えがとにかく面倒すぎる
2022年に長崎~武雄温泉間が開業した西九州新幹線は、長崎方面や博多方面に向かう際、武雄温泉駅で乗り換えが必要である。しかし、新幹線が駅に着いたら、ホームの向かいに乗り継ぐ特急が停まっているので、それほどストレスは感じない。1~2分もあれば楽々乗り換えは完了する。 ところが、敦賀駅は違う。先に述べたように、駅の1階から3階までをエスカレーターで上り下りすることになるのだ。筆者が名古屋から特急「しらさぎ」に乗って敦賀駅に着くと、新幹線に乗り換える乗客が、キャリーバッグやボストンバッグを手に一斉に階段を駆け上がっていった。JRが想定している乗り換え時間は、わずか8分しかない。高齢者や介助が必要な人が、うまく乗り換えできるのだろうかと心配になった。 乗り換えを間違えたり、乗り遅れたりする人を防止するためとはいえ、駅員のアナウンスが駅の中に響いてかなり耳障りだった。案内に当たる警備員や駅員は、他の駅より多い印象を受けたが、関西で一杯飲んで北陸に向かう際、乗り換えのアナウンスを聞かされると思うとかなり苦痛である。 北陸新幹線は金沢~敦賀駅間で建設が終わるのではない。さらにその先、新大阪駅まで延伸して、ようやく全線開業となるのだ。途中に小浜駅を通るルートが計画されているが、予算面や環境問題への対策が原因で着工の見込みは立っておらず、開業は早くても2030年代、もしくは2040年代までずれ込むのではないかと予測をする人もいる。したがって、当面は敦賀駅で乗り換えを強いられるのが既定路線である。
フリーゲージトレインの不採用の影響
こうした事態が起こることは、開業前から予測されていた。2018年には沿線の自治体などが中心となり、新大阪延伸までの間、福井駅まで直通する特急を残すようにと国やJRに要望しているのだ。しかし、新幹線が開業すると、特急が走っていた北陸本線の一部は第三セクター鉄道に移管されてしまうため、実現しなかった。 いったいなぜ、こんなに面倒な乗り換えが生じる羽目になってしまったのだろうか。それは、フリーゲージトレインの開発が難航したためである。JRでは、新幹線と在来線で線路の幅が異なるため、相互に車両の乗り入れができない。そこで、線路の幅に合わせて車輪の幅を変えて、新幹線でも在来線でも走行できる列車の開発が進んでいた。これがフリーゲージトレインである。 当初は、西九州新幹線の開業に合わせて採用が予定されていた。しかし、走行試験を繰り返す中で台車に亀裂が見つかったという理由で、2018年に開業時の実用化を断念した。その影響を大きく受けたのが北陸新幹線である。実は、北陸新幹線の金沢~敦賀間開業の際は、新大阪駅まで全通が実現するまでの繋ぎとしてフリーゲージトレインを採用する予定だったのだ。乗り換えの手間を省いて利便性を確保しようという構想だったが、北陸新幹線も導入を断念してしまった。 フリーゲージトレインの技術が未熟なまま、見切り発車で計画を進めたことが、今回の不便な乗り換えに繋がっているのは否めないだろう。高齢者が重そうな荷物を持ち、敦賀駅の階段を上っているのを見て、気の毒に思えた。全通までは特急を数往復でもいいから、残すべきだったのではないかと考えてしまう。せめて対面乗り換えを採用するなど対策を練って欲しかったが、導入を断念してから駅舎の設計を変更するのは難しかったのであろう。