障害者の再犯 深い孤立で刑務所への“無限ループ”【連載:京アニ事件ー傍聴席からの考察ー第3回】
■福祉の必要な受刑者を支援
犯罪歴のある障害者を出所後一時的に受け入れ、社会に復帰できるよう見守っている。田村さんがこうした支援を受けられるようになったのは、『特別調整』という制度があったからだ。 特別調整とは、身寄りがないうえに高齢や障害によって自立が難しい受刑者を、出所後、円滑に福祉サービスにつなげる手続きのこと。その橋渡しを担うのが各都道府県に設置された『地域生活定着支援センター』で、14年前に制度化され、現在は全国で年間800人近くが支援の対象になっているという。職員は、主に出所を目前にした満期受刑者と面談し、その人の適性や希望を見極めながら住む場所を見つけたり医療機関と交渉を行ったりする。 一方で、福祉サービスへつなぐだけが役割ではない。取材中も、職員の元には、支援を行った元受刑者たちからの電話が頻繁にあり、相談があった場合などには、グループホームを直接訪れ面談を行うこともある。
■「特別調整」制度設計の背景は
特別調整の設計に関わった龍谷大学の浜井浩一教授は、制度ができた背景について、刑務所内に障害者や高齢者、外国籍など何らかのハンデを抱えている受刑者の割合が増え続けている状況があったと話す。 龍谷大学 浜井浩一教授「障害者っていうのは、周りが認識をして、そもそもサービスがあれば犯罪するような人たちではない。家族が支えていれば犯罪をする可能性はないわけです」 障害を持っているだけではなく、不遇な成育環境などによる深い孤立が原因で、刑務所を出ても居場所がない人たちが多数存在している。その人たちが刑務所に居場所を求め、何度も刑務所に出入りしてしまうケースが後を絶たないと指摘した。 龍谷大学 浜井浩一教授「身寄りもなく障害を抱えていたり高齢で働けないような受刑者に対しては、何らかの支援をして福祉へちゃんとつなげて、そこで生きていけるような制度を作りましょうと。そうすれば、この無限ループを断ち切ることができるんじゃないか」 本来福祉にかかるべき人たちに目が向けられていなかった実情。特別調整は、そうした人たちを、適切な支援に結びつけるための制度だ。