米中の国防相、台湾や南シナ海巡り協議-訪問先のシンガポールで
(ブルームバーグ): オースティン米国防長官と中国の董軍国防相は31日、訪問先のシンガポールで会談し、台湾や南シナ海、ウクライナでの戦争、中東紛争などを巡り協議した。
同日開幕のアジア安全保障会議(シャングリラ会合)に出席する両氏の会談は約1時間15分続いた。中国国防省の呉謙報道官は会談終了後、「前向きかつ実務的で、建設的」な話し合いだったと記者団に述べた。
呉報道官によれば、会談は予想以上に長引き、双方は交流と意思疎通を維持することで合意したという。中国側は会談を称賛し、米中が誤算を避けるのに寄与するとの認識を示した。
米政府高官の一人は、オースティン長官は率直かつ断固たるプロフェッショナルな姿勢で会談に臨んだと評価したものの、米中間の溝を埋めるには1回の会談だけでは不十分だと示唆した。
米国防総省の声明によると、米中双方は今後数カ月以内に戦区レベルの軍司令官が電話連絡を再開し、年末までに危機に関する意思疎通の作業部会を開くことで合意した。
同声明はまた、オースティン長官が台湾周辺での中国の軍事活動活発化と、中国の「ロシア防衛産業の基盤を支援する役割」について懸念を表明したと明らかにし、米中間の隔たりが残っていることを示した。
呉報道官は、ロシアやウクライナに中国政府が武器を供与しているとの見方を否定し、台湾総統に頼清徳氏が選ばれことを祝う米国の決定は誤ったシグナルを送ったと主張した。
今回の会談は、バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が昨年11月にサンフランシスコ近郊で会談して以来、両国関係がやや安定したことを示す最も明確なシグナルとなった。
2023年の早い時期に米国の本土上空に飛来した中国の気球を米国が撃墜すると、米中関係は大きく悪化。昨年のシャングリラ会合には、オースティン長官のほか、中国からは当時の李尚福国防相が参加したが、両者は夕食会の前に握手を交わしただけだった。
習主席が進めた人民解放軍の汚職捜査で李氏は失脚。董氏が新たに国防相に就いた。