全国で感染相次ぐ“麻疹”の症状・現在の動向を医師が解説「ワクチン接種が唯一の予防法」
麻疹とは?
編集部: 今回のニュースで取り上げた麻疹について教えてください。 中路先生: 2015年に日本は、WHO(世界保健機関)から麻疹の土着ウイルスが存在しない排除国として認められています。つまり、2015年以降の麻疹感染は、海外から持ち込まれたウイルスによるものになります。近年の感染者数について、2019年は744人の患者が報告されましたが、コロナ禍の2020~2022年は10人以下でした。それが2023年には28人に増加し、2024年3月22日時点では8都府県で少なくとも20人の感染が確認されています。 麻疹ウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症で、感染経路は空気感染や飛沫感染、接触感染となっており、感染力が非常に強いのが特徴です。免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%の確率で発症し、感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。感染してから約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が表れます。2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発疹が出現します。また、肺炎や中耳炎を合併しやすいことに加えて、1000人に1人の割合で脳炎が発症すると言われています。 麻疹は、ワクチン接種が最も有効な予防法となります。麻疹患者に接触した場合でも、72時間以内にワクチンの接種をすることで、発症を予防できる可能性があります。ワクチンを接種することで、95%程度の人が麻疹ウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。
麻疹の感染状況への受け止めは?
編集部: 麻疹の感染状況への受け止めを教えてください。 中路先生: 現時点では、麻疹には特効薬がないため、ワクチンで感染を防ぐことが唯一の手段となります。日本では就学前の子どもが定期接種として公費での接種が可能ですが、年代によっては接種されていない場合があります。そのため、定期接種が可能な小児科などの医療機関を優先し、必要な量を供給することが求められます。日本国内では麻疹の感染者が相次いで報告され、ワクチンの需要が高まっています。限りある医療資源を各医療機関で有効に使うため、必要以上の予約・注文は慎むべきであると考えます。